6 黒滝

 この地方は、八幡太郎義家が来て、戦いをしたところだ。その戦いのとき、ちょ うど西の葉山にクキノミネというところあり、クキノミネの「クキ」というのは 魚の「ハヤ」のことを言うのだ。あのような高いところさ、クキノミネというの は、八幡太郎が来たとき、舟で来たからであった。
 そのとき、深山の黒滝明神があるが、荒砥を泥の海にしてくれると、大蛇が堰 とめる。そしてこの辺は舟で通らんねがった。そんで、八幡太郎はそこまで舟で 来て、桜の木を折って舟をつないだ。行ってみたら、大きな木だ。こいつが元は 細くて逆さまに元が細がった。そしてその川のところを切って水を通した。それ で深山の方は頭、荒砥の方は尻尾だった。そこに黒滝明神を祀ったわけだ。その 黒滝は米沢まで流れの音がきこえるど。そして西方の黒滝明神に今も蛇がいっぱ いいる。
(嵐田勝見)
>>かっぱの硯 目次へ