2 稲場の土ぐも

 上奥田というところに、稲場という家がある。
 そこの家で、ちょっと山手に畑があった。そしてそこさ、稲場家の嫁が毎朝、 晩方、お汁の実とりに行かんなねわけだ。そうしてどうも刻限になっど、行くと いうのが、家の人、不思議に思ったわけだ。
 ところが、ある晩方、行ったところが、すばらしいええ男がそこに待ってだて 言うんだ。そして嫁が懐胎したていうわけだな。
 その出た子どもがクモだったど。土グモを退治して、今、稲場の傍に祀ってた のが、それだそうだ。
(嵐田勝見)
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