1 コロリの幽霊

 関というじさまの話。
 明治十二年、コロリ(コレラ)で何百人もの死体を埋めたところに、堤の方向 けて小屋を建てた。夕方になって家に帰って来っど思ったら、見知らぬ婆がいる。
「はてな、どこの婆であった?」
 て聞いたれば、「米沢だ」て言う。
「米沢なて、今頃、こりゃ、御苦労なごんだな」
 と思っていたら、坂のむじり角まで来たら、その婆、見えなくなった。そんで 和尚さまに頼んで拝んでもらった。
 きっと、コロリが流行した時に、米沢中でバタバタ死ぬもんだから、棺桶がと ても出来なくて、ここの山の天頂さ孔掘って、死人を裸にして埋めた。そいつの 怨霊であんまいかと、供養して塔婆建てたど。
(嵐田勝見)
>>かっぱの硯 目次へ