6 きつねとかおす 

 むかしあったけど。
 あるところに、きつねとかおすどいだっけど。そうして、かおすはきつねどこ さ、
「晩げ、おら家さ遊びに来ねが、雑魚いっぱい獲ったから、御馳走すっから、お ら家さ来い」
「ほだが、ほんじゃ行くべ」
 て、きつねは喜んで行ったど。そうしたれば、いや、あるにも御馳走はみな雑 魚、おままは雑魚、お汁も雑魚、お皿も雑魚、おひらも雑魚、いやそのうまいこ と。きつねは鼻ふかふかていわせて、片っぱしから平らげだど。
「いや、うまがった、うまがった。かおす。こがえなうまい雑魚、なじょすっど 獲られるんだい」
 て、きつねは聞いたど。ほうすっどかおすはにこにこて笑いながら教えたど。
「あのな、きつね、こうすんなよ。寒(かん)じる晩によ、川原さ行って、尻尾を川端さ 浸たしておくのよ、そうすっど、その尻尾さ雑魚はみなゴチャゴチャとついて、 集まって来っから、そん時、尻尾を引っとり上げっどいうど、いっぱい雑魚とれっ こで」
 て、教えたど。
「やぁ、ほんじゃ、おれも行ってとって来(く)んなね」
 ていうわけで、狐はこんど川原さ行ったど。ほうしたところぁ、その晩げは寒 じる晩げで、ビリビリ、ビリビリと感じて来たずも。だんだん夜更っど感じて来  て、
「いや、こりゃええあんばいだ。今日は一つ、なんぼいっぱい獲れんだか、一つ、 かおすに聞いた通りやってみっから」
 ていうわけで、きつねは太い尻尾、川さボジャンと入っで、ほうしてツクンと して待っていたど。そうすっど今度は、お星さまはきらきらと輝いて寒い風は吹 いて、いや寒(かん)じるわ、寒じるわ、そうしているうちに、ビリビリ、ビリビリと氷 張って、川さ、
「大変、こりゃええあんばいだ。一つ、ここらで引張ってみっか」
 きつねはちいと尻尾引張って見たど。ほうしたれば、何だかくっついて、ちょっ と上がって来ねがった。
「いや、こりゃ、なんぼ雑魚くっついだんだか、まず、いまちいといっぱいくっ つけて獲んべ」
 なて、きつねはそのまま寒いげんど我慢していたど。
 ほうしてこんど、うすら明るくなるまで待ちでから、こんどはなんぼいっぱい こりゃ、喰っついたがと思って、尻尾を引張ってみたところぁ、なかなか上がっ て来ねずも。
「いや、こりゃ、ええあんばいだ。まず、こりゃ雑魚なんぼいっぱいくっついだ んだか、うん、大したもんだ」
 て、引張ってみっけんども、なして、上がって来ないじだ。凍みてしまったん だから、雑魚くっついたと思って、ほりゃ。きつねは一生懸命で引張ったど。な んぼ引張っても上がって来ねずも。
  少々の小雑魚 落ちても大事ぁない 大事ぁない 大事ぁない
  少々の小雑魚 落ちても大事ぁない 大事ぁない 大事ぁない
 て、一生懸命で引張っけんども、上がって来ねずだ。ほうしてるうちにはぁ、 今度はだんだん明るくなって来た。
「いや、こりゃ、明るくなった。こりゃ、明るくなって誰か人など来っどおっか ない。」
  少々の小雑魚 落ちても大事ぁない 大事ぁない 大事ぁない
  少々の小雑魚 落ちても大事ぁない 大事ぁない 大事ぁない
 きつねはまず一生懸命で引張っずも。そうしているうちに明るくなって、テカ テカお天道さまなど出かかって来たもんだから、そのうちに子どもら川原さ遊び にきた。
「あらら、あそこに何かいたぞ」
 なて言うずも。と、きつねはこんど気ぁもめで、そうして、
「行ってみろ、行ってみろ」
 なて、子どもら言うもんだから、ますますきつねはあせって、エンヤラサ、エ ンヤラサと引張ったずも。そうして引張った、引張ったもんだから、尻尾は尻か らスポーンと取っでよはぁ、尻尾なしになって、きつねはかんから、かんからと 逃げて行ったどはぁ。
 きつねはときどき、他のけものなど騙したり、かおすどこなど騙したりしたも んだから、とうとうかおすに仇取らっだんだど。んだから人騙したりさんねぞ。
お前もだもなぁ。とーびんと。
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