15 河童の手紙

 むかしむかし、ある人が手紙頼まっだ。ほの手紙は宛先もなければ、送り主の名前もなければ、不思議なこともあるもんだと思って、
「へえ、とんなこともあるもんだ。ほんでは誰さやっか分んねっだな。どこそこまで行ったら渡して呉ろなて()っだげんども、その人、果して来ねもんだかわからね」
 で。その人はふっと考えた。
「はぁ、いま巷ではびごってる河童の仕業だな。河童だらば、これ水さ濡らしてみっど分かるんねべか」
 て、はいつ、ほの手紙、水さ濡してみたれば、現わっだ。
「とてもうまそうなのを、お前にまがせっから、自由にこの者を楽しんで、ほれから食べてくれ」
 ていう文面だった。
「なんだこの畜生、おればなぶり者にして殺して、ほの他、食ってけろていう手紙だったのか、もっての他だ。よーし」
 ていうわけで、こんどその人が手紙書き換えだ。
「この者は正直で、とても働き者だから、金子など、宝などくれてやるがよい」
 て、書いて、ほして()しゃねふりして行って、ほの手紙持って、ある沼んどこまで行ったれば、待っていだっけはぁて。
 ほしてその、待ってたどこさ行って手紙渡した。ほうしたけぁ、手紙見っだけぁ、何だかいぶかしいような顔して首ひねり、首ひねりしったけぁ、沼さずいっと入っていったけぁ、風呂敷包みみたいなもの、どさっとぶん投げて、また沼の中さ入って行ってしまった。何だべと思って風呂敷包みあけてみたれば、はいつぁ金銀財宝だったて。はいつ、ぐらり背負ってきてはぁ、家さ来て、ほしてすばらしく金持になったけど。はいつは河童ば欺したはなし。どんぴんからりん、すっからりん。
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