13 松茸

 むかし、あるどこて、子どもが出ぬくて子どもが出ねくていだった。ほして神さまさいろいろ願かけた。ほうしたら、その奥さんが腹大きくなった。ところが奥さんが五十才、旦那さんが五十三才だった。
「いやいや、こりゃとんでもない、遅く子宝授かったもんだ」
 て、いだ。ほして十月(とつき)十日(とうか)の月満ちてきたげんど、生まんね。二十か月、まる三年もかかってしまった。
「なんだ、こりゃ生まれんなだべか」
 というたれば、三年経って生まっだ。ほして、
何て(なえ)名付けんべ」
 ていだ。
「五十三で入ったんだから、まず五三(ごさ)とでも名付んべはぁ」
「五三なぁ、んだて、間違いで生まっだんだ。間違いで生まっだ子だから、五三(誤差)でええがんべなぁ」
 て、「五三(ごさ)」て名付けた。ところがほの五三どのぁ、三年も腹の中さ入ってだもんだから、すぐ口立った。ほして、ある人ぁ聞いてみた。
「五三殿、五三殿、腹中の気候ざぁ何たもんだぇ、お前、三年も居で」
 ていうたれば、
「ああ、一年で一番ええ気候なもんだ」
「一年で一番ええ気候だていうの、何月頃だった」
「ちょうど九月の末か十月の初め頃だった」
「なして、ほだごどわかる」
「んだて、ちょいちょい松茸ぁ出っけも」
 どんぴんからりん、すっからりん。
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