10 かみなが姫

 むかしむかし、あるところに、とっても働き者の若夫婦いだっけど。ほして、とうちゃんは山で炭焼き、かあちゃんは機織りして暮していたど。
 ところがその二人の間には子ども居ねがった。ほしてお観音さまさ、
「何とか一つ、子どもを授けてけらっしゃい。子どもを授けてけらっしゃい」
 て、お詣りした。ところが念願かなって、子ども授がった。授がったげんどもその子ども、頭髪の毛一本もない。女の子ども授がって、頭坊主なもんだから、
「いや、困ったもんだ」
 て、毎日、何とか髪生えるようにて、お願いしったげんども、髪生えね。不思議なこともあるもんだ。
 たまたま南の方の山光る。おかしいこともあるもんだて、山のかげは輝いて光る。何かがあるに相違ない。行ってみっかというわけで、二人で行ってみたれば、ほのお観音さまがクモにいじめらっでいた。
「これは大変だ」
 ていうわけで、とうちゃんが木挽きなもんだから、山刀、(まさかり)、鋸(たが)って行ってクモさ立ち向った。ほして、お観音さまを助けようとした。
 ところが、そのクモもさるもの、激闘の末、とうちゃんが、とうとうそのクモにやっつけらっでしまたけどはぁ。はいつ見っだかあちゃんは、とうちゃんば殺していらんねていうわけで、お観音さま助けらんなねもんだから、かあちゃんが向って行ったら、何百本という糸をクモは投げてよこす。
 ところが、かあちゃんは機織りの名人だもんだから、ほの糸を簡単にさばいで、糸をそっちゃさばき、こっちゃさばき向って行った。ほうしてとうとう、おかちゃんがクモを短刀で突き殺した。んだげんども、クモの毒廻って、かあちゃんもそこでとうとう、二人とも死んでしまったけど、んだげんども、お観音さまが助かったもんだから、お観音さまが、その娘さ、髪授けた。
 次の日から、たけなし黒髪でフサフサとした髪がその娘さ出た。
 ところが、ある日、雀が城中で、門前さ巣作った。はいつ分ったのが、つくづく見っだら、さらっと下がってきた髪の毛みたいながある。
「おかしいもんだなぁ」
 と思って、はいつ取ってみたれば、すばらしい、たけなし黒髪の真直な髪だった。ほの髪の持ち主だら、さぞかし美人だべというわけで、草の根分けでも探して参れていうわけで、方々探したげんど見つからぬ。ところが山沢の田舎の方まで探したら、とうとう娘見つかった。んで、誰言うとなく「かみなが娘、かみなが娘」と()っでいだったはぁて。
 たけなし黒髪、毎日クシですいて、そして髪結っていっどこなの、にこっと笑ったどこなの、ものすごい美人だった。ほしていつか殿さまに見出さっで、お観音さまのおかげで、めでたく殿さまの奥方になったけど。どんぴんからりん、すっからりん。
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