9 雪女

 むかしむかし、東北には、この雪女ていうのがいだったど。
 ある吹雪の日なの、旅人が通っていっど、おぼこ抱いてきて、
「どうか、このおぼこ、ちょえっと抱いてでけらっしゃい、用達して来っから」
 普通の人だら、「んだか」なて、ほのおぼこ抱いだんだら最後、困ったもんだ。たちまち重たくはなる、寒くはなる。冷たくはなる。んだげんども、はいつ絶対はいつ、電気さでも引掛ったように離さんねんだど。ほして命とらっだ。どこそこさ、また雪女出はったて、人々から大変恐れらっだ。
 あるところでなの、
「向う岸さ渡っだいんだげんど、どうか向う岸さ渡してけらっしゃい」
 て、ワラジ履きだった親切な人は、ほれ、「んだか」ていうわけで、その女ば背負って、向う岸さ渡んべと思うと、川の真中で冷たくなって、ほしてはぁ足動かねぐなってしまった。そして川の中で往生してしまったということ、たびたびあった。
 んだから、東北の方では、雪女ていうの、非常に恐れらっだもんだど。どんぴんからりん、すっからりん。
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