5 夢見の又右衛門

 むかしとんとんあったずま。
 ある村に三本橋というところあった。ほしてその村に又右ェ門という人がいて、夜寝っだれば、お観音さま現わっで来て、
「これ、又右ェ門、又右ェ門、お前は正直で一生けんめい稼ぐええ若衆だ。んだげんど、なかなか貧乏してるげんども、おれの言うこと聞け。たちまち金持になっから。ほしたら、決して金ていうものは悪い方さ使わねで、ええ方さ使わんなねぞ」
 て言うたけぁ、すうっとかき消すごとく無くなって、目覚した。
「はぁ、お観音さま、おれの言うこと聞け、お観音さまの言うことには、三本橋の上さ、三日間立ってろて言うたはずだ。なるほど」
 て言うわけで、次の日からいきなり行って、毎日三本橋の上さ立ってだ。一日立ってだ。何ごともない。
 二日目、これも朝げ早くから日中の暑いとき、あるいは夕方の日暮しの鳴く頃まで、西山さ日がとっぷり没する頃になっても何もない。
 いよいよ三日目、ほして、朝げ早くから、夕方おそくまで橋の上さ立っていた。
 ところが、豆腐屋出はって来て、
「おい、何、毎日ほだえして立っていんなだ」
「いや、こういうわけで、夢枕に立って、して、おれのいうことを聞くど、必ず金持にしてくれっから、て()っだもんだから、おれもお観音さま信心だし、こさ立ってたわけだ」
 というた。
「いやいや、当てなんね。そういうことは、俺もな、つい(せん)だって、こういう夢見た。ある部落の尻の方に白椿ある。その白椿の根っこ掘っど、大判小判がざくざく出るからていう夢見だった。おれはたわえない夢だと思って、掘りもしねがったげんども、夢なんていうものは当てなんねもんだ。掘ってみたれば、瓦や瀬戸かけに決っているっだな。ほだな、金銀、誰も土の中さ埋けておぐ人いねっだな」  て、いうて行った。
「はぁ、それだ」
 というわけで、その又右ェ門がいきなり、こんど家さ来て、唐鍬だ。両ツルだて、掘るもの持って行って掘ってみたれば、果せるかな、そこに金銀、大判小判財宝が埋まっておった。して、金持になって、道普請だの、橋普請だのて、みんなのために使って、私すねで、みんなのために使ったので、みんな、
「三本橋のお大人、三本橋のお大人」
 ていうようになったけど。どんぴんからりん、すっからりん。
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