18 太公望のはなし

 この太公望ていうえらい人がいだっけそうだ。その人は毎日何仕事ざぁない。雑魚つりだけだそうだな。そして毎日雑魚つりだけども、一匹も釣ってきたためしない。
 そして、おかたが、
「なえだて、おらえの親父、雑魚つり、雑魚つりって何も持って来ねで、なぜな針でつってるんだべ」
 て見たら、雑魚針みたいに曲っていねで、真直ぐなだけど。なんぼしたて釣らんねだずな。
 ほしてこんど、
「はつけな、小馬鹿くさいなど居らんね」
 て、夫婦別れしたんだど。
 太公望はいっこうに変りなく暮しったど。そして何年かくらしているうちに、大変出世したていうのだな。その話聞いて、元のかがが戻っだくて、ししゃますだなね。
「どうか元のように、めんどう見て呉ろ」
 て来たていうなだな。
「ほだか、ほだれば、おれの言うこともある。この手桶さ水いっぱい汲んでみろ」
 て、何あずけたと思ったら底ないツルベだったど。なんべん汲んだって駄目だ。
「そのツルベで、いっぱい汲んだら、おれぁおかたにする」
 ほんで底なしツルベあずけらっで、なんぼ汲んでも溜まんねっだな。
「ほんでは駄目だ」
 て、元のおかたになりかねたど。
(横尾高治)
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