12 泥棒の改心

 あるどこに、じさまとばさま二人暮ししてお蔵の中へ暮していんなだけそうだ。そうしてたところ、夜寝っだればドガリ・ドガリて音するていうんだね。「何だべ」て耳すだてていたれば、下から手突出(つだ)してよこしたずも。こいつ泥棒だったど。そいつ、じさま見つけて、ギイッと手つかんで、
「ばさま、ばさま、庖丁もって来い」
 て言うたてなだ。その泥棒、恐っかないっだな。庖丁もって来いて言うなだもな。泥棒は、いま切られっか、いま切られっかていたべ。そしたばそのばさまも気ィついて、庖丁もって来いて言(や)っだげんども、札束にぎられて、ぐいっと押っつけてよこしたていうなだったど。そうして泥棒、手切られんべと思ったの、銭つかまえさせて押っつけてよこしたんだほでね。喜んで逃げたど。
 ところで何年か暮したればよ、
「おれも、おかげさまで仕合せになった」
 て、大した礼を送ってよこしたっけてな。
(横尾高治)
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