4 姥捨(1)

 あるところに孝行な息子いたんだけな。その当時、年寄り六十才になっど、山さ捨てて来らんなね慣わしになっていたんだけど。そしてそうなったはげて、背負って山さ登って行くのだけど。それで道わかんねぐなんべて、そのばんちゃ、みな木曲げて折って行ったんだど。そして行ったんだげんど、そこの息子だけ投げて来らんねんだど。そしてまた連(せ)てきて穴倉さ入(い)っで、みんなの目のつかねぐして食いもの食せておいだけど。
 そしてあるとき、殿さまの「触れ」で灰で百尋縄なって来っど、うんと褒美呉(け)るて言うなで、みんな縄なったげんど、仲々なう人いなくて、その人、穴の中さ入って行って、そのばんちゃさ聞いたれば、
「縄なって、縄は焼くどええ」
 て教えて、その縄なって焼いて、殿さまどさ持って行って褒められたど。そしたらまた、
「打たずに鳴る太鼓もって来い」
 て言わっで、また聞いたら、太鼓さ蜂入って拵えてもって行って褒めらっだという話だ。
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