20 かい餅-和尚と小僧

 むかしあったけど。
 和尚さまと小僧いだっけど。賢こい小僧であったども、なかなか和尚さま、自 分ばり食って、そばかい餅、毎日毎日、一日一ぺんは好きで食ねでいれね和尚さ まだけど。
「おらも、ちっと食たい」
 なていうども、
「いやいや、おれみたい和尚になっど毎日食れっから、小僧のうちは食せらんね」
 そして毎日、自分ばり食って、小僧食だくていんな、ある日、隣村の法事さ和 尚さま頼まっで行ったど。雪の降る日であったど。そしてこんど、和尚さまの姿 (なり) 見 えねぐなっどはぁ、かい餅鍋かけてはぁ、かい餅拵えだじも。そしてあんまり拵 えすぎで、皆食んねがったど。
 それからこんどはぁ、そのかい餅の残ったのはぁ、どっさり雪の中さ埋めてし まって、そして鍋きれいに洗って伏せで、かい餅埋めたとこで小僧歌詠んでいた ずも。歌の好きな小僧であったから。そしてその上さ糞たっだど。
   雪ふりてしるしの糞も見えざれば
    そばかい餅はいかになるらん
て詠んだど。
 和尚さま、そこに来て、
「何しった小僧、何か歌詠んだか」
「あんまり雪降ったから、雪降りてしるしの松も見えざれば、わが古里はいづく なるらん、とそう詠んだ。家さ行ぐとき、途中にある松も今日は見えねぇようだ」
 ほして、こんど、和尚さまも負けてしまったちゅうだごで。
「お前も里恋しいだろうから、家さ帰って休んで来るように」
 て、泊りに行かせたど。むかしとーびん。
(高橋しのぶ)
>>行けざんざん 目次へ