10 糠福米福

 むかしあったけど。
 あるどこに糠福という子ども生んで、おっかさ死んでしまったけど。そして後 添えもらったど。んだげんど、そのおっかさにも子ども生まっだから、米福と名 付けたんだど。
 して、大きくなっど、おっかさ、自分の産 (な) した子どもばっかりめんごがっこん だずもの。衣裳でもええなは米福に買ってくれっど。して、秋になって栗いっぱ いなった頃、
「お前だ、二人で、栗拾いに行ってこい」
 て言いつけて、糠福には袋さ孔あいたな持たせて、米福にはええ袋もたせてやっ たけど。ほして、糠福拾うども、何だか溜んねと思ったば、孔あいていだんであっ たずも。ほして、米福は、
「姉ちゃ後さくっついて歩くと拾われっこで」
 て、おっか教えてやったもんだから、後くっついて歩くと、その孔から落ちた な、ずうっとあっこんだずもの。んだから米福は一時 (いっとき) に拾ったど。ほして、
「姉ちゃ、おらいっぱいになったから、おら行ぐはぁ」
 て、米福は家さ来たずす、糠福はいっぱいになんねで、ほして栗林の傍に沼あっ どこで、しょんぼり涙こぼしていたど。そうしたばその沼の水、がほがほ、がほ がほと動いたと思ったれば、大蛇あらわれだつうものだもの。糠福は恐っかながっ て逃げんべと思ったら、
「逃げっことないぞ、お前のおっかだ、お前ばむごさくて、おれ浄仏さんねで、 こうしていたなだから」
 て、そう言うずも。そしてこんどはぁ、おっかになって、傍さ来たど。延命小 袋と打出の小槌呉っだなだけど。そして、
「お前、困るようなことあったら、この打出の小槌ふれば、何でも出るからなぁ」
 て、そう言うてくっだど。
 それをもらって、まず、栗ば早速袋一つにして家さ帰ったど。ほうしたば、
「糠福、何のごんだ。今頃、米福なの、さっきだにいっぱい拾って来たぞ」
 て、まずおんつぁっだど。
 そしてはぁ、そのうちに町にお祭りあるごっだずも。んで、そこさ芝居師など 来るなんて話あったど。
 それ見に、米福、おっかどさ、
「連れで歩 (あ) えべ」
 なんて、喜んではぁ、衣裳も買ってもらって、連 (つ) っでってもらうことになった ど。ほれに糠福は、
「この米搗いて、それから来い」
 なんてはぁ、米搗き言いつけて行ったど。ほして一生懸命で搗いっだど。ほし て友だち衆も、
「糠福、見に行かねが」
 て呼ばっども、
「おれ、この米搗いてから行ぐはぁ」
 て、行がんねつうなだも。一緒に。ほして、ほだどもみんな行ってしまってか ら、その米も「早く搗けろ」なて搗いではぁ、そして衣裳も自分が着たい衣裳、 それ打出の小槌で出して着て、お祭り見に行ったどはぁ。
 そうして見てたば、こんど米福見つけて、
「おっかさ、おっかさ、あれ姉ちゃであんまいか、あんなええ衣裳着て来ったわ」
 ていうたど。
「糠福、あんなええ衣裳持たねもの、ほでねぇごで」
 そっちの方で見っだど。ほしてその人の帰んねうちにと思って、家さ帰って来 てはぁ、知しゃねふりしったど。ほしたばそれ見に、隣村の庄屋の息子も行って で、その糠福ば見染めたずも。そして、
「あれ、もらいたいもんだ」
 なていう話になってはぁ、そこの家さもらいに来たど。ほうしたれば、
「そんなの、おら家の糠福でねぇ、米福だべ」
 なて、おっかさは言うずも。
「いや、それでなく、糠福の方だ」
 て、そういうど。ほうして糠福ば、どうでも貰わねねていうから、呉っだごっ だど。
 ほして、御祝儀なっじゅうに、衣裳も買ってくんねがったど。糠福は自分で出 して、立派な花嫁になってはぁ、そのあたりは、のりものなてなかったもんだか ら、馬さのせてもらって、そうして貰わっで行ったど。
 それ見て、米福、
「おっかさ、おらも行きたいな」
 ていうずも。
「あんなええ衣裳着て、おれも馬さのって見だいなぁ」
 ていうずも。んだども、そんなこと出ねぇんだから、あるうちの一番ええな着 せて、脚立さでものせたかして、引張っているうちに、川さ落して死なせてしまっ たけど。むかしとーびん。
(川崎みさを)
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