8 ねずみの金搗き

 むかしあったけど。
 じさま、山さ火野 (かの) うないに行ったど。ほして、うなってだば、ねずみ孔見えっ ずも。何か音するようだと思って見っだば、中で臼搗 (ひ) くような音すっど。じさま 一孔大きくして入って行って見たど。ねずみいっぱい集まって、臼搗 (ひ) きであった ど。
   ずこいもっこ こんずるす
   百十 (ひゃくとお) になるまで 猫の音聞きたくない
   ずこいもっこ
 と搗 (ひ) くど、大判小判もまざって、ざくざくと落ちっだけど。じさまもはまって はぁ、
   ずこいもっこ こんずるす
   百十になるまで 猫の音聞きたくない
 なて、はまって搗 (ひ) いたど。
 そして帰るて言うたば、お土産だって、いっぱい小判もらって来たったど。そ して家さ来て、ばさまに見せっだれば、隣のばさま、また来てはぁ、
「なんと、お前 (み) だち、こらほどのお金、なんとしてもうけやった」
「おら家 (え) のじさ、火野うないに行って、ねずみ孔で、ねずみの臼挽 (ひ) き手伝って、 もらって来たんだ」
 て、教えだど。
「んでは、おら家のじさもやんねね、ゴロゴロ寝てばりいる」
 て、家さ行って、
「じさじさ、隣のじさはこうして金もうけて、もらって来たていうから、お前 (み) も 行ってござれ」
 て、やったど。
 したら、じさ、火野うないもしねで、ねずみ孔さ入って行ったど。したばやっ ぱり挽いていたど。
   ずっこもっこ こんずるす
   百十になるまで 猫の音聞きたくね
 て挽くど。じさ考えたど。
「これは、ちとばかりもらって帰るより、猫の真似したら、ねずみ皆逃げて行ん かも知んねぇ、そうせば、これ皆、おれ取って帰られる」
 こう思ったずも。
 じさ、「にゃおー」ていうたど。そうすっど、ねずみども、
「そら、猫来たから、早く孔くけろ」
 て、孔びっちりくけらっで、じさ、その中ではぁ、出はらんなくて死んだけど。 ばさは、何日 (いつか) 経っても、じさま来ねではぁ、泣き泣き死んだけど。むかしとーび ん。
(川崎みさを)
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