2 ねずみといたちの寄合田

  むかしあったけど。
 むかし、越前の川原ていうどこさ、ねずみ、粟蒔いたど。して、よく実ったも んだど。
 ねずみ、大抵刈る頃になったべと思って、行ってみたど。ほうしたらば一本も ないずもの。誰か刈ってしまって、
「はてはて、これ、いたましい。誰刈って行ったもんだべ、他人 (ひと) の粟」
 ど、そう思って来たば、牛いたど。
「牛どの、牛どの、越前の川原の粟知しゃねぇか、誰刈ったが」
 て聞いだど。
「おらは、知しゃねぇモー」
 なて、行ってしまったど。
 こっちさ来たば、犬に行きあったど。
「犬どの、犬どの、越前の川原の粟刈ったな、お前 (み) だか」
「そんなもの知しゃね、わんわん」
 なて行ぐぜす、ほして来たば、烏に行きあったど。
「烏どの、烏どの、越前の川原の粟刈ったな、お前 (み) だか」
「粟、知しゃない。がぁがぁ」
 なて飛んで行ったど。
 ほうしてはぁ、誰刈ったもんだかと思ったども、もしやしたら、いたちだかなぁ と思って、いたちの家さ行ったど。
「いたちどの、いたちどの、越前の川原さ粟まいたな、刈ったな、お前 (み) だか」
 ていうたど。
「いやいや、おらは刈んね」
 そんな話しったどさ、いたち子、ちょろちょろと出はって来たど。
「おっか、おっか、昨夜搗いた粟餅食 (く) だい」
 ていうたもの。そうしてはぁ、粟盗んだことわかったけど。それがらはぁ、ね ずみといたちは大仲違えになったけど。むかしとーびん。
(川崎みさを)
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