17 クェンクェンコむかし

 じじとばばあったけど。じじは山さ柴伐りに、ばばは川さ洗濯に行ったど。川 上から赤い小箱と白い小箱流っで来たけど。そうすっど、
「赤い小箱こっちゃ来い、白い小箱そっちゃ行げ」
 て言うたど。そうすっど赤い小箱こっちゃ流っで来たけし、白い小箱向うさ流っ で行ったけど。そうすっど、ばば、オボコもいねがったもんだから、赤い小箱わ らわらと持 (たが) って来て見たれば、小っちゃこいクェンクェンコ入っていだわけだど。
そしてユルリさ火焚いてだもんだから、温かくしておいで、大事にして大きくなっ たけど。そして大きくなって、こんどぁよっぽど大きくなったもんだから、鍬も持 (たが) け、手斧も持 (たが) け、なんて言うて、じじとばば、鍬もみな背負ったり、手斧を背負っ たり、クェンクェンコさ、追かけて行ったど。そうすっど、
   ここ掘れクェンクェンコ
   ここ掘れクェンクェンコ
 て言うどこだもな。そうすっど、「何語んべ、まず」なて言うたげんども、背負っ て行った鍬で掘ってみっど、そしたら銭だもな。「いやいや、大したもんだ」なて、 あっちも掘りこっちも掘ったりしたれば、なんぼも銭ばり出てくる。じじとばば はその銭きれいに洗って干しったど。そしてクェンクェンコ連 (せ) て来たど。そして 大事にして育てていたば、隣のばば、
「昼飯食わったか」
 て来たけど。
「なえだ、こっちの家に銭、金、どっから出したった」
 てだど。そうすっど、
「おらえのクェンクェンコ、歩 (あ) えべなて言うけぁ、鍬も背負え、唐鍬も背負えな て、手斧も背負えなて畑さ行ってみたば、そして掘ってみたば、こがえに銭出た なだ」
 なて言うたど。
「ほんだら、おらえさもそのクェンクェンコ貸しておくやい」
 なて言うたどな。
「いやいや、こいつ貸さんねどこでない」
 て言うたら、
「そんじゃ、じじ連 (せ) てきて借っで行かんなね」
 なて、じじ連て来て、むごさくて大事に飼ってだなビリビリ引っぱって行った ど。そして貸してやったどころが、背負えとも言わねな鍬を背負ったり縄つけて、 ぎりぎり引張って行ったど。そしたらここ掘れとも言わねな掘ってみたれば、い や汚ない馬の糞や牛の糞などばりビタカタと出て、ピリッとはじけて顔 (つら) さ泥糞 だらけだ。「こっげなクェンクェンコだ」なて殺してしまったど。そうすっど、蘭 塔さ埋めて来たのだな。そうすっどクェンクェンコ持 (たが) きに行かんなねて行ったら ば、「今日 (こんにち) は、おらえのクェンクェンコ返しておくやい」て言うたど。
「はつけなクェンクェンコ、わかんね。牛の糞と馬の糞などばり出てわかんね。 さっぱり銭出ない。あつけなものぶち殺して埋めて松の木植えて来たから、行っ てみろ」
 て言わっじゃど。そうすっど、じじは泣き泣き来て、むごさいごとした。殺さっ で蘭塔さ埋めらっじゃて、言うて、じじとばば墓詣りに行ったんだど。そうすっ どこんど、その松の木、だんだんにおがって、見てるうちにおがったど。そうすっ ど大きくなったから、伐って松の木でスルスこしゃったどな。そしてスルス挽き すっど、ばばの前さ銅貨、じじの前さ金貨、ジャランジャランと銭いっぱい落ち たど。じじとばば喜んでいたどこさ、隣のばば来て、
「昼飯食わったが」
 て来たど。
「いやいや、こっちの家の銭、どっから出しなさった」
 て言うど、
「そっちの家でおらえのクェンクェンコ貸さんねて言うな、ビリビリ連 (せ) て行って 殺してしまったし、松の木植えて来たな、松の木でスルスこしゃったな、スルス 挽いたら銭落っで来たなだ」
 て言うたど。
「そんじゃ、そのスルス、おらえさも貸しておくやい」
 て言わっじゃど。「貸さんね、貸さんね」て言うたげんども、じじ連 (せ) て来て、ビ リビリ二人で来て背負ってったって。そうして挽いてみたところぁ、ばば前さビ タ糞、じじ前さ馬の糞、さっぱり銭など出ないごんだ。そうすっどじじぁごしゃ いで、こんどそのスルス持 (たが) きに行かんなねて、じじ行ったど。そしたらば、
「あつけなスルス、おら前さビタ糞、じじぁ前さ馬の糞で、さっぱりわかんねか ら、みな焚いてしまった。灰 (あく) そこさあっから持って行げ」
 て言わっだずもな。
「いやいや、おえないことさっだ。クェンクェンコは殺される、スルス拵うど、 スルスはみな焚かっで、灰ばりになる」
 て、じじは泣き泣き、また灰持 (たが) って家さ来たずもな。そうすっど仕様ないんだ し、灰持 (たが) って行ったど。そうすっど、
「そこ通る者、誰れもんだ」
 て言わっだど。「花咲かせじじだ」て言うたど。「ほんじゃ、花咲かせてみろ」て 言わっじゃど。「はい」なて。ほんで木の上さあがって、
   アヤチュウチュウ
   コガネサラサラ
   チチンポンポン パラリン
 て言うたずも。
「いや、きれいな花だごど。きれいな花だ。もう一ぺん咲かせてみろ」
 て言わっじゃどもな。そうすっどまた「アヤチュウチュウ、コガネサラサラ、 チチンポンポン パラリン」て言うたずもな。
「いや、きれいな、かえってきれいな花咲いた、じじ、もう一ぺん咲かせてみろ」
 て言わっで、そうすっどまた、じじぁ「アヤチュウチュウ、コガネサラサラ、 チチンポンポンパラリン」て言うたずも。
「いや、きれいな花だ、なえだて上手な花だ、ほんじゃ御褒美やっから、降ちて 来い」
 て言わっだど。そうすっど、じじぁ木の上から降ちて来たっけぁ、殿様に、 「重いカゴええか、軽いカゴええか」
 て言わっじゃど。
「おれは年寄りで力は持たないから、軽いカゴ呉っでおくやい」
 て言うたど。
「ほんじゃ軽いカゴ呉っから、家まで行くうち決して開けないで行けよ」
 て言わっじゃけどな。「はい」なてもらって家まで来たど。
「ばば、ばば、殿さまさ行って花咲かせて、御褒美もらって来た。家まで開けな いで行げて言わっで来たから、家で開けてみろ」
 なて言うたど。そしたら開けてみたところ赤い衣裳から銭からいっぱい入って だごんだずも。
「いやいや、これはええ」
 て喜んでいたどころさ、また隣のばば来たずもな。「昼飯食わったが」て来たず もな。
「いやいや、またこっちの家で衣裳と銭と金、どっから出しなさった」
 なて言うたど。
「いやいや、おらえのじじぁ、お前家でスルスみなぼっこして灰にしたな、灰持っ て行って、そして殿さまさ行ってもらって来た」
 て言うたら、
「ほんじゃら、おらえのじじもやらんなね」
 て、スルスの灰ないもんだから、ユルリの灰持 (たが) って行って、そしてまた山さ行っ てまた、
「そこ通るもの、誰もんだ」
「花咲かせじじいだ」
「そんじゃ、花咲かせてみろ」
 なて言わっじゃどな。「はい」なて、上がった。そして、
   アヤチュウチュウ
   コガネサラサラ
   チチンポンポン サラリン
 なてしたずもな。
「さっぱり咲かね、面白くない、花さっぱり分かんね」
 て言わっで、「もう一ぺん咲かせてみろ」て言わっだずも。「アヤチュウチュウ、 コガネサラサラ、チチンポンポンパラリン」て言うたげんど、さっぱり咲かね がったずもな。
「わかんねがら、降っでこい」
 て言わっで降っで来たずも。
「御褒美あげる。重たい篭ええか、軽い篭ええか」
「おれは豪傑者だから、重たい篭呉っでおくやい」
 て言うたどもな。
「そんじゃ重たい篭呉っから、家まで決して開けんなよ」
 て行ったところが、とても背負ったげんど重たくてとても歩かれるもんでない。 そして何入ったんだか見たいくて、家まで行かねうちに、開けたもんだど。途中 でよ。そうしたところが、中さ入っていだの、何にも銭も衣裳も入っていねで、 蛇だの、蛙だの、蝮だの、イタチだのいっぱい出て、じじどこ刺したど。泣き泣 き来たど。そうすっどばば、
「じじぁ唄うたって来た」
 なて、家の屋根さ上がって、トンコベラ叩いて待っていたけど。んだから、人 の真似ざぁするもんでないど。とーびんと。
(大平・嘉藤)
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