16 桃太郎

「さて、今日は川さ行って洗濯しっかな」
 て、おばちゃが行ったって。そうすっじど、向うの方から何か赤いものが流っ で来って、
「はて、奇態なものが流っで来たもんだ。川さ野郎こべら流して寄こしたべか なぁ」
 て、おばちゃが洗濯しったって。だんだんおばちゃの岸さ寄ってくる。こうい うわけよ。「奇態なものなぁ」て、おばちゃがこんど洗濯やめて、それ眺めていた ところが、こっちさ流っでくる。そして拾ってみたらば、大きな桃だったわけだ。 「いや、これは大した桃だ。こんな大きな桃見たことない、早く行って、じっちゃ さ見せんべ」
 て思って持って来たど。そして、
「桃持って来たから、じっちゃ早速御馳走なれ」
 て言うわけで、庖丁探 (た) ねに行ったところが、二つに割れてオボコが出たど。こ ういうわけだ。
「いや、オボコ持ちだくていたけぁ、ええがったなぁ」
 て、二人が喜んだど。そして桃太郎好きなものは何でも食べさせたらば、ずん ずん大きくなった。そして大きくなったどころが、
「おばちゃ、団子こしゃって呉ろ」
 こういうわけだ。
「団子など、何しっこど」
 て言うたらば、
「何が島ていうどこに鬼がいた。その鬼を退治する」
「まだ早いから、そんなことすんなよ。桃太郎、いまと大きくなってから行け」
 て言うげんども、聞かねがったど。
「いや、こさって呉ろ」
「そんなら、こさってやる」
 ていうわけで、おばちゃが団子こさって呉たど。そうこうしているうちに、お 猿さんが来て、「桃太郎さん、どさ行ぐ」
「こういう島さ、鬼征伐に行ぐ」
「ほんじゃ、おれに一つ団子呉ろ、おれも連 (せ) て歩 (あ) えべ」
 て。そうこうしているうちに犬が来た。犬も「おれどこ連 (せ) て歩えべ」ていうわ けで、犬さも団子呉て、キジから犬から猿から連 (せ) て鬼が島さ行った。
「おれが大きな鬼さ向うから、お前だは小っちゃい鬼さ向えよ」
 なて、いろいろ語って行った。そしたればいだっけ。そして桃太郎は大きな鬼 さ向った。そして鬼もいよいよ降参して謝った。そして宝物もらったのよ。山の ほど宝物、車さ積んで、キジが綱引き、犬、桃太郎はちゃんと宝物さのって来たっ けど。
(高畑・斉藤きち)
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