9 狐むかし

 エノキの旦那、大晦日 しずに の買物に峠を越えて、白鷹から山形さ行ったど。行くと き途中で女出はって来て、
「おれぁ狐だげんども、買物頼まっで呉ろ、また此処に居っから」
 て、銭、五円札だか寄こして、買って来て呉ろて言わっで、ニシンだの油揚げ だの買いに行ったど。そして狐だじもの、銭、本当なんだか嘘なんだか分んねん だしな、その旦那、とにかくそいつで買って来たど。そして自分も大晦日の買物 なんだから、みんな買って、奉公人連 (せ) て行ったなさ背負わせて寄越したんだど。 そして自分が後から来て、買物頼まっだな、どこにいたかと思って来たらば、やっ ぱりそこにいたけど。買ったもの置いたら、
「ありがたかった、しあわせだった。おらえの家はこの向うだから、廻っておく やい」
 て言わっじゃど。そして山ずうっと廻ったれば大きな家あっけど。そこさ行っ て御馳走になっていだっけな、余程 (よっぽど) もよって、御馳走になったりしたんだし、奥 の座敷でええ女来てお酌して、誰もいねなだけど。
 夜になったれば、じっちゃが礼釈しに出はって来たんだけど。そうすっじど、 ナズキ(額)さ宝生の玉巻いでだもんだけど。
「一年もようと狐だ、一年もようじど、そこさ宝生の玉、一つずつ喰付くなだ」
 そしてばっちゃも出はって礼釈してから引込んで行ったもんだど。その内に、
「竹駒の稲荷さまさお使いに行かんなねぐなったから、聟になって呉ろ」
 て言わっじゃごんだど。そうすっど家の晦日のことなど忘っではぁ、聟になっ て呉ろて言わっじゃもんだから、聟になる分にして、それにとんなええ着物きせ らっで、こんど、
「明日、馬さのって出かけらんなねなだ」
 て、いよいよその明日になって、馬さのって出かけっどこだじもはぁ。黒馬さ のって、ドウドウ、ドウドウと出だしたずも。
 そうしたば、家では来ないもんだから、来なくて困るもんだから、なじょになっ ていだと思って大勢で迎えに行ったど。そしたれば峠越えて行ったところに、焼 け棒杭さ上がって、ドウドウ、ドウドウなて、旦那いだったど。
「なえだ、旦那、晦日でみんな待ってたに、なえだ」
 て言うど、
「おれぁ、竹駒の稲荷さ聟になって、位受けに行くどころだから、家さ行かね」
 て言うごんだずも。そうしてこんど行かね行かねて言うたたて、狐に化かさっ で真黒な焼け棒杭さのって、ドウドウ、ドウドウていたなだから、そいつ連て来 てあったど。
(大平・渡部もよ)
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