7 舌切雀

「今日、空ええなぁ、じっちゃ」なて、ばばちゃが言うったて。
「うん、今日は空ええから、おれ、山さ行って来っかな」
 て、じっちゃが腰曲げて頭巾 (ずきん) かぶって山さ行ったって。そうしてあまりこわい(疲 れて)もんだから、一休み休んで、タバコ点けっだって。そしたれば、チリンチ リン、チリンチリンて、雀の音したってよ。
「いや、今日は雀のいた日だな。一匹採って行んかなぁ」
 て、そのおじいさんが休んでいだって。そうすっど、おじいさんさ雀がチョコ チョコと傍さ来て、バターッと笠で蓋して採ったって。
「いや、採った。ほんじゃ、ばっちゃどさもって行ってなぁ」
 て、じっちゃ喜んで持 (たが) って来て、篭さ飼ってだ。飼ってで餌 (もの) などは食せてあっ たべげんども、ばっちゃも空ええもんだから、窓貼っかなぁて、窓貼りしたって。 そして窓貼りして糊、傍さ置いっだな、雀が腹へってあったんだかして、出はっ て糊舐めたて。
「いや、おれの拵った糊、みな舐めた。雀に相違ない。かっづけなもの飼ってお かんねから、舌 (べろ) 切って飛ばす」
 ていうわけで、おばちゃが鋏で舌 べろ 切って飛ばしてやったって。そうすっど、晩 方、じっちゃが帰って来て、
「おれの飼ってだ雀どさ行った。ばば」
 て言うたば、
「ああ、おれ拵った糊舐めたから、舌切って飛ばしてやった」
 て、そのばっちゃが言うたって。
「いやいや、むごさいなあ。どっちゃ飛んで行った。ばっちゃ」
 て言うたば、
「そっちの方さ飛んで行ったな」
 て、ばっちゃが言うたってよ。
「いやいや、ほんでは明日あかるくなってから、探ねに行って来んなね」
 て、そのじっちゃが次の日になって探ねに行った。チリンチリンと雀の音すっ ど。
「ああ、あいつぁおれの飼ってだ雀だべがなぁ、雀の音だなぁ」
 て、足止めていだった。そしてどこからともなく「おじいちゃん」て音がしたっ て。そして、
「おれぁ雀だぜ、おら家ここだから、来てみろ」
 て招 (よ) ばたど。そしてそのおじいさんが行ったところぁ、いや、きれいな家でそ してそこで「いや、おじいさん、来て呉だか」て言うもんで、
「おれであったぜ、雀、舌切らっじゃな」
 て礼釈したって。
「いや、むごさがったな」
 て。そしてこんど、御馳走してやるていうもんで、いろんな御馳走食せて、
「はて、暗くなるに、そんがえにいつまでも居られんめぇな」
 て思ったば、
「じっちゃ、いまちいと休め、踊り見せてやる」
 ていうわけで、雀踊り、赤い衣裳着て踊りおどったど。面白いにまぎっで、暗 くなるの忘 (わ) せて、じっちゃがいだげんども、
「はて、こんどは行かんなね」
 て言うたば、「ほんじゃ、宝呉っじぇやる」ていうわけで、宝物もらって来てあっ たど。そうすっど、こんど家さ帰って来たば、ばっちゃ、
「何背負って来たそ」
「雀から御馳走になって、お土産もらって来た」
「ほんじゃ、おれも明日行ってもらって来 (く) んべ」
 て、こういうわけであったど。
「ああ、舌切ったもの、呉んねべ」
 て言うたげんども、
「いや、おれ行ってもらって来る」
 て言うわけで、出かけて行ったど。やっぱり雀の音していたけど。そうすっど 「じじだら寄せる、ばばだら寄せね」て、こういう話が聞えて来たど。んだげん ども、そういう人だから、無理やりに入って行ったど。大した御馳走もないけて いう話だけし、雀どら、どこさか一散に隠っで居ねがったど。そしておっつぁま とおっかちゃだけだっけど。そして宝物欲しくてばり行ったもんだから、
「おれにも宝物呉 (け) んべな」
 て、こういうわけだ。
「うん、呉っじぇやる、呉っじぇやる。重たいな呉っじぇやる」
 こういうわけで、重たい箱呉っじゃ。そうすっど、喜んで来たわけだ。家まで 来ねうちに開 (あ) けたくて開 (あ) けたくて開けたど。途中でよ。そうすっど化物出はって 来て、ばっちゃかからっだど。とーびんがと。
(高畑・斉藤きち)
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