トクサのワラジ


 荒砥の郵便局さ、郵便もちがいだったど。郵便もちちゅうのは、毎日歩かんな ね。そいつぁ秋の日の道が悪い。藁で作ったワラジだど、一日 (ひして) に、七足も十足も 履かんなねがったど。いろいろ考えで、トクサのワラジ作ったれば切れまいと思っ て、郵便持ちはトクサのワラジ作ったど。
 トクサのワラジ履いて、打越の入口まで行って、たばこすっど思ったら、足の平 (ひら) があんまり軽いもんで、ちょっとたばこして足の平ば見たら、足首まで減ってし まっていたっけど。
 それからまた履いて、鳥居のところまで行ったところが、丁度乳のあたりまで 減ってしまっていたっけど。
 して、いよいよ打越さ行って弥吉ていう、打越一番の金持の家さ行って、
「ゆうびん、ゆうびん」て郵便持ちはどなったど。弥吉の家の人が戸を開けてみ たげんども、どこにも郵便持ちいながったど。よっく見だら、頸さワラジあった ど。
 たばこ一服つけて、郵便持ちは帰っど思って、
「頸ばりではめんどうくさいから、歩 (あ) いであるくには、そのカバンさ首を入っで 行くべはぁ」
 て云うて、カバンに首をぱっと入っで、かついで来たったど。
(貝生 工藤六兵衛)
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