大当たり


 むかし、あるところに狩人がいだっだど。一つ玉つめて、打越沼さ行ったどこ ろが、鴨はずうっと二十羽も横に並んで、沼の上さ浮 (う) ぎったけど。一つ玉なもん だから、スポーンと打 (ぶ) ったところが、二十羽の鴨ぁ、ありったげ打ち通したど。
 ところが、逸れ玉は沼岸にあった大きな栗の木の下さいた熊は昼眠していたが、 その熊の腹さ当ったど。そしたらば熊は苦しまぎれに、栗の木をたずさえでゆさ ゆさゆすったど。その栗の木の実は、今熟 (う) んで落ちるばっかりだったほでに、栗 はボダボダ落ちたど。
 沼のあちこちさ浮いた鴨二十匹背負って、熊一匹とって、大栗三俵ばっかりほ ろってくれたのを拾って、それから見たれば、熊が切 (せつ) ないまぎれに後足でガリガ リ根っこ齧ったもんだからそこに生えた自然薯二十貫目ばっかり掘ったど。
 そして気付いで、衣裳が重たいと思って、脱いでみたところが、股引の中さ、
どんじょが五六貫目入っていたど。帰りには背負って来らんねがったほどだった ど。
 これぐらい大当りもないもんだ。
(貝生 工藤六兵衛)
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