姥捨


 むかしぁ、六十一才になっど、山さ捨てらんなねがったど。
 その家の息子ぁ、おばんちゃを山さ背負って行ったら、途々、木の枝をおばん ちゃが折って捨てでったど。そして息子さ、
「木の枝折って来たから、そいつを頼 (たよ) って帰れよ」て教えたのを聞いて、息子は、
捨てかねてまた背負って家さもどり、穴蔵さしまっていたど。
 そうしたところに、「灰で縄なう」ことを殿様が云い出して、誰か灰で縄なう人 いねかて云って、さがしたど。息子は家さ来て、考えておばんちゃに聞いたとこ ろが、
「板の上さ、縄をあげて焼いてそのまま持って行げ」て云わっで、持って行った ど。そいつを殿様に賞 (ほ) めらっで、
「誰に聞いた」て云われたところ、ばんちゃに聞いたて云うて、賞めらっだど。
トービント。
(西高玉)
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