赤い小箱白い小箱


 むかし、おじんちゃとおばんちゃいだったど。おばんちゃが川さ洗濯に行った ら、赤い小箱と白い小箱、流って来たど。
    赤い小箱あっちゃいげ
    白い小箱こっちゃこい
 て云うて、白い小箱拾って中ば開けてみたら、中さクイゴコ入っていたど。そ れを育 (おが) したらクイゴコから、「山さ遊びにあえべ」て云わっで、
    じんちゃも乗れ クェンクェンクェン
    ばんちゃも乗れ クェンクェンクェン
    俵もつけろ クェンクェンクェン
「そんなに付けらんね」て云うたら、
「ええからつけろ、クェンクェンクェン」て連れ (しぇでが) らっで野原まで行ったら、
「ここ掘れ、クェンクェンクェン」て云わっで、大判小判いっぱい出たど。
 そしたら、隣の火もらいばんさ来たんだど。
「火呉 (け) でおぐやい」「寄って持ってっておぐやい」て云ったので、入って来て、
「こんなにいっぱい、どうして出した」て、けなりがったど。そしてそれをおし えたどこ、
「クイゴコ貸しておくやい」
「貸さんない」て云うのを、無理やり連れ (しえで) て行ったんだど。そして付けろとも云 わねな、のれとも云われねな、引っぱだき引っぱだき行ったところが、掘れとも 云わぬ所を掘ったれば、カワラカケやセトカケばっかり出たど。怒ってクイゴコ 殺してはぁ、山さ埋めて松の木一本植えて来たどはぁ。
「クイゴコ返してけろ」て、おじんちゃが行ったれば、
「はつけなもの、殺して埋めたから松の木植えてあっから」て云われて行ったら、
大きな松の木あったど。
 その松の木でスルス彫ったど。そしたところで〈松の木の、おズルス、ようか んだ、ようかんだ〉て挽いたところが、チャランチャランて大判小判落ちたど。
 火もらいばんさがまた来て、またけなりがって、
「スルス貸しておくやい」
「貸さんね」て云うたな、持 (たが) って行って挽いたところが、また同じにカワラ・セ トカケしか落ちながったど。そしてまた怒って、割って焚いだどこだど。そこさ、
「返しておくやい」て行ったところが、
「はっつけなもの、ぶつ割って焚いた」て云うので、
「灰 (あく) だってええから、持って行くべ」て云うて貰って来たど。その灰もって、殿 様来たどこさ、「花咲かせの名人、花咲かせの名人」て行って、〈アヤはチュウチュ ウ、コガネザラザラ、チチンポンパラリン〉なて、枯木さ灰蒔いたら花咲いたど。 殿様は大変賞めて、殿様に、
「重たい篭ええか、軽い篭ええか」て云わっで、
「年寄りだから、軽い篭ええ」て、軽い篭もらって来たど。
「家まで行がね内、開けんなよ」て云わっで、家さ帰って来て開けてみたら、赤 い装束や宝物いっぱい入ってたど。
 火もらいばんさがまた来て、灰 (あく) を持 (たが) って行ったら、殿様から「花咲かせてみろ」 て云わっで蒔いたげんど、花は咲かねがったげんども、殿様は、
「重たい篭ええか、軽い篭ええか」て云うたど。
「欲たかりだから、重たいなけておくやい」て云うたど。
「開けないで行けよ」て云わっだげんど、あんまり重たいので、途中で開けてみ たど。そしたら、蛇とか何かの化物がいっぱい出てきて、血だら真赤にさっだど。
おばんちゃは「あら、唄うたって来たどら」て見っだら、泣き泣き帰って来たど こだったど。
 んだから決して欲たけんなよ。トービント。
(西高玉 原ひで)
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