ダンゴむかし-米をぶさたにするな-

 むかし、おじいさんが庭掃除したところ、一穂の米の穂を見つけたど。これは 勿体ないと、それを粉にして、いい米も混えてダンゴをこしらえたど。食 (た) べんべ としていたところが、そのダンゴが転んで、ころころころころと何処までも転ん で行ったど。そこで、
「ダンゴどの、ダンゴどの、どこまでござる」て追かけて行ったら、大きな穴が あって、その穴にひょろひょろて入って行ってしまったど。それから、しような いんだし、かまわずその穴さ入って、ずっと追かけて行ったところが、大きな地 蔵さまいたけずま。そしたれば、地蔵さまの手さ、ちゃんと上って、地蔵さまが ダンゴをぺろっと食ってしまったど。
「おじいさん、おじいさん、ダンゴのお礼にええもの見せてやっから、おれの手 さ上れ」
「もったいなくて、地蔵さまの手さなど上らんねえ」
「ええから上れ」て云わっで、手さ上ったど。こんどは、
「肩さ上れ」て云うたど。
「もったいなくて上らんね」
「ええから上れ」かまわず上ったれば、
「頭さ上れ」
「もったいなくて上らんね」
「ええから上れ」て云わっで頭さ上ったど。その後、
「梁の上にいろ」て云うので、梁の上さ上 (あが) ったど。
「いまに鬼共が一杯バクチうちに来 (く) っから、そんどきいい頃にトキ(鶏)をつく れ」て云わっだど。
 そのうち鬼共がぞろぞろと集まって来たど。そして鬼が、
「人くさくないか、こりゃ」て云うど、地蔵さまは、
「人など誰もいね」て云うたど。
 鬼共は地蔵さまの前で蓆をひろげてバクチぶち一生懸命になってやったど。そ して大体夜明け近くになったもんだから、おじいさんは鶏のまねをしたど。
「こりゃ、夜明けるな、だんだん行かんなねごで」
 そしてしばらくして二番鶏のまねして鳴いたので、
「こりゃ、夜明けるな」すると、三番鶏のまねしたど。みなは慌てて銭などありっ たけ、そこさ置いてはぁ、行ってしまったど。地蔵さまは夜明けたもんだから、 「おじいさん、おじいさん、降りてこい、こいつぁあんだどこさダンゴ御馳走に なったごほうびにあげっから、みな背負って行け」て云わっだがら、おじいさん は有難くてはぁ、その金みなもらって家さ帰って来たと。
「おばぁさん、おばぁさん、昨夜 (ゆんべな) 、こういうわけで大した金、地蔵さまにもらっ て来た」て云うたど。そしたらおばぁさんが、
「そんじゃら、俺も行ってもらってくんべ」て云って、ダンゴこしゃえで、転び もしないなを転ばし、転ばし、穴さ入って行って、地蔵さまに食せたど。
「んじゃ、晩げまでいて、鶏のまねしろ」て云わっだど。そして鬼共がぞろぞろ 来たら、
「なんだか今夜は人くさい」
「いや決していない」て地蔵さまが云うげんど、
「いないざない。とにかく匂いすっから、さがせ」て云うて、鬼共がさがしたら 見つかって、引張り出さっで、さんざんな目にあわせらっで帰って来たど。トー ビント。
(貝生 工藤兵次)
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