桃太郎

 むかし、おじいさんとおばあさんあったど。おじいさんが山さ柴刈りに、おば あさんが川さ洗濯に。して川から流って来た桃拾って来て、そのうちに、山から じさまが帰って来たもんだから、
「桃拾って来たから、ごちそうすっからって」
 持 (たが) って来て、俎の上さあげて、割ってくれんべと思ったら、桃の中から子供が 出て来たど。
「ほりゃ、オラダ子なしだから、天から授がったんだべ。立派に育てんなね」
 なて、一生懸命育てたど。
 十五才になって、
「鬼ガ島さ征伐に行ってくるから、キビダンゴこしゃえでけろ」
「そげな危ないどさ行かねだら、ええんねが」
 て云うげんども、「行ってくる」て云うことで、キビダンゴこしゃえでもらって、 ずうっと行ったところが、始まり犬と会ったど。 「桃太郎さん、桃太郎さん、どこさござる」
「鬼ケ島さ征伐に行くどこだ」
「背負ってだな、なえだ」
「こいつぁ日本一のキビダンゴだ」「ほんじゃオレどさ一つ呉れでおぐやえ」
 そして一つもらって行ったれば、猿が来たど。猿もその通り一粒もらってお供 して行ったらキジが来たど。キジも一粒もらって行くこどになったど。そして四 人して鬼ガ島さ行ったど。ところが鬼ガ島さ行ったれば、鉄の門があって入らん ね。キジぁ、
「オレが飛んで行って開けてけっから」
 て飛んで行って、内から戸を開けだど。門を開けて行ったら、鬼共ぁ大酒盛の 最中だったど。そこさ入って桃太郎が攻めたら、鬼も降参して、
「宝物ありったげ上 (あげ) っから、生命だけ助けてもらいたい」
 て云うもんだから、車さいっぱい宝物もらって、凱旋したど。トービント。
(中山 山川嘉之助)
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