41 鼻の中から豆二俵

 むかしから、〈旅は道づれ〉なて言うて、一緒になった人どお国自慢話するのが定法だった。ある時舟さのって、ずうっとお国自慢しながら行った。ほうしたれば、秋田の人は、
「おら方のフキはすばらしい大きなフキだ。()っちゃこいフキでも唐傘ぐらいある」
「うわぁ、んでは大きいフキていうど、どのぐらいある」
「五里四方あるまな」
「五里四方、ほのフキ、なんていうフキだ」
 ほしたれば、
「ホラフキだ」
 て言うたど。一方の方は、
「おら方の大仏さま、大きい。奈良の大仏さま、これは大したもんだ。坐ってで四丈八尺。んだから立つどまだまだ大きいわけだ。何でも、人なの鼻の孔さ入って、鼻の孔の中掃除するい」
 したれば、山形の人はこういうこと言うた。
「おら方なの、鼻の孔から豆二俵とる」て言うた。
「いやいや、はいつには魂消た」
 て、ほいつには負けだけど。鼻の孔の中から豆二俵とるざぁ何だど思ったれば、紅花の花、一反歩作って、はいつの中さ豆蒔いで、さらに二俵とる話だったど。どんぴんからりん、すっからりん。
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