40 三人のほら吹き

 むかしむかし、ある城下に三人の大ぼら吹きの大嘘つきいだっけど。ほしてほの話が殿さまさ聞こえで、
「んだらば、三人の大ぼら吹きの大嘘つき、余の前で嘘ついてみろ」
 こういうわけで、三人が呼び出さっで、殿さまの前さ行った。ほうして一人の人ぁ、
「実は、おれは百姓で、七反歩さ小麦蒔いだ。そうしたところが海から大きいワニザメ上ってきて、一晩のうちにつるっと()っでしまったはぁ」
「はぁ、これもすばらしい話だ」
 したれば一人の人ぁ、
「おら家でも丁度七反歩作った、ところがほこさ豆一本蒔いだれば、ふたがってしまって、七反歩ふたがってしまって、ほして収穫してみたれば、倉さ七つ半、豆あった」
「いやいや、大したもんだ」
 ていた。ところが別な人、町家の人が、
「おらえの家には、すばらしい大きな槍ある」
「なんた槍だ」
「穂先三間、柄が十間ある」「はぁ」
「お殿さまにも、ほだえ大きな槍ないべな」
「余のもとにもそういう槍はない。どうだ、その槍持ってまいれ」
 殿さまに()っでしまった。
「何ていう槍だ」
「こいつぁ、嘘つく槍だ」
 嘘つく槍、前の人二人とも嘘なもんだから、はいつ付く槍出てしまってはぁ、ほの二人負けてしまた。
「いや、お殿さま、持って来るな結構だげんども、ここさ持って来っど、お殿さまの喉元まで刺さってしまう」
 て言うたって。
「ほんでは駄目だ」
 て、ほんで殿さまも持ってこいと()ねがったど。どんぴんからりん、すっからりん。
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