38 まま子の豆

 むかしむかし、ある村に、とってもひどいまま(かか)いだっけど。ほんで、ほこのうちも百姓で娘一人いで、ほして百姓、畑七反、田六反歩ばかり作った中農だけど。ほしてある時、まま母が娘さ、
「この豆一日でみな蒔いてこい」
 て()っで、豆蒔きに行った。
「出ねどええが、芽が出ねど家さなの置かねぞ」
 そうして渡した豆は煎り豆だったど。んだからなんぼ蒔いだて出るわけないんだど。ほして、んだげんども、娘は一生懸命、片脇から、ちょこちょこ、ちょこちょこ豆蒔きしてった。飛ばして蒔いたなんても()んねし、足のアゴさ合せて、ちょこりちょこりと行って、暗くなるまでかかって蒔いできた。いつか何日も豆出ね。出ね、当たりまえだ。煎り豆だ。そうしていびらっだ。
 ところが真中頃さ一本豆出た。そいつは毎日うなり立てておがる。べろべろ、べろべろおがって行って、ほして一本で七反歩さひろがってしまった。ほうしてほだえ大きくなったもんだから、継母、こんど恐っかなぐなって、「何かある」と、こういう風に読んで娘さあやまったんだど。
「いや、おれ悪れがった、お前さいじわるして悪れがった」
「お母ちゃん、ほだごどない、おれだって一生懸命誠意つくしたんだ、ほして逝くなったお母ちゃんさもお願いして、なぜかかぜか、一本でもええから出るようにして()らっしゃいてお祈りしただけで、何にもカラクリも魔法もないんだ」
 て言うたて。ほして仲悪がった二人の仲がよくなって、ほして秋になって花咲いだ。ほうして豆実ってみたれば、今までの何十倍も()った。二人は喜んで、ほの豆の木、木挽きに頼んで倒してみたれば、すばらしい太いがったので、もったいないって言うので、根っこの方で(ふた)コロばり切って、はいつの中えぐって、太鼓作ってお寺さまさ納めて、二人で仲よく暮したけど。どんぴんからりん、すっからりん。
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