29 熊の忠告

 むかしむかし、秋晴れの日に、友だち二人して山さ栗拾いに行った。ほうして一生懸命そっち拾い、こっち拾いして、夢中になって拾ったらば、ものすごい大きい熊、のっしのっしとやって来た。ほしたれば一人の人は、いきなり木の上さ登った。相手の人は、ほれ「熊来た」て教えられっど、その人も逃げんなだったげんども、一等最初発見した人は、自分の身ばり大事で、友だちさ教えねで、自分ばり木さ登った。ほうしたれば友だちは逃げる暇なくてはぁ、そこさコロッと死んだふりした。ほして、はいつ木の上から眺めっだ。
 ところが熊、ほっちフウフウ、こっちゃフウフウてやったりしたけぁ、耳先で何か喋ったの見えた。ほして、二、三回、こだえして手でひっくらかえしたり、もっくらかえしたりして見っだけずぁ、熊がかまねではぁ、死んだもんだと思ってはぁ、ずうっと山の中さ、のっしのっしと行ってしまった。ほして木から落っできた人は、
「おいおい、君、君、お前さ何か熊言ったようだけぁ、何か言うたもんだか」
 て言うた。
「んだ」
(なえ)て言うた」
「友だちの危険かえりみないで自分ばり逃げるような人と、今後一切付き合うなて言うた」
 ていうたど。どんぴんからりん、すっからりん。
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