19 小判産す大黒さま

 むかしむかし、あるところに、素焼きのお大黒さまあった。ところが見たとこ悪いんだげんど、その素焼きのお大黒さま、どういうわけか毎日一枚の小判たれる、チャリ。次の日またチャリ。
 はいつ、その噂聞いだものすごい欲ふかい旦那さま、はいつ高い銭出して買って行った。ほしたけぁ、やっぱりチャリン、チャリン。小判一枚ずつたれる。一枚一枚たれんのめんどうくさいから、尻の孔大きくすっどいっぱいたれるんでないかと思って、焼け火箸で尻の孔大きくして()だ。ほしたればほん時、お大黒さま悪れ顔したっけ、次の日から、ざらざら、ざらざらして、砂しかたれなぐなった。ほうしたれば、ほの旦那、ごしゃえではぁ、ぼっこしてしまった。ほして、んだげんど、売った人ぁ、心配して来てみた。
「なしてほだいして、ぼっこしたべ」
 て言うたれば、
「こういうわけだ。一枚なてめんどうくさいから、尻さ焼け火箸当てて呉だ。したれば砂しかたんねぐなったから、ぼっこした」
「ほんではなんねっだな。おれさ元の銭でゆずってけらっしゃいはぁ」
 て、ほしてほの人がまた持ってって、ほの焼け火箸当てたとこば直して呉で、壁塗って治して呉で、ちゃんとして呉だれば、やっぱり次の日からまたチャリン、チャリンて小判産すんだけど。馬鹿欲たけでしたって駄目だ。結局あんまり馬鹿欲はたけらんねもんだって、その人言うたもんだけど。どんぴんからりん、すっからりん。
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