12 みかんの芽

 むかしとんとんあったけずま。
 あるとき、宿場町さ殿さま泊って、みかんの皮投げて行ったんだど。今みかんなていうどみんなの食いものだげんど、当時は殿さまぐらいしか()んねがった。
 ほんでみんな、村中の人がみかんの皮の匂いかがせてもらったなていう時代に、ある人がみかん、たらふく食った。ほうして、あんまりうまいもんだから、種子一緒に飲込んでしまった。ところが、
「はぁ、こりゃ、種子飲んでしまった。出るであんまいし、こりゃ」
 て思っているうちに何だか腹少し片腹固くなったと思ったら、ほっから伸びて来るような気がして、ほして喉ずうっと伝わって、頭のてっぺんから芽が出た。
「あらら、芽出てしまった、こりゃ」
 ほだえしているうち、はいつぁドンドン伸びて行って、はいつは白い花咲いで青い実つけてしまった。
「あら、実なのなったっだ、こりゃ」
 なているうちはぁ、たちまち今度は、はいつは黄色いみかんになって、子どもら、わいわい来て、みかん?ぎ始まった。うるさいくて、うるさいくて仕様ないから、鋸で切ってしまうべと思って、鋸あててみたげんど、自分の頭の上なもんだから、鋸、思うように挽かんね。何とかしてていうわけで、本気なて引張ったれば、スポーンと抜けでってしまった。
「ああ、ええがった」
 と思ったら、頭さ大きい穴あいてしまった。ほしてある時、外さ行ったれば、雷さま雨だ。雷さま雨はこんどそこさ溜ってしまって、湖できてしまった。
「やぁ、こりゃ困ったごんだ。湖なったっだ、こりゃ」
 なているうちに、こんど子どもらいっぱい、わさわさと集まって雑魚釣り。
「いや、フナ釣らった、鯉釣らった」
 て、ほら、耳あたりさ引っかける、眉あたりさ引っかける、(なん)だかんだない。うるさくて仕様ない。
「なんだべ、この野郎べら、ほに、うるさいごど、うーん」
 なて言うたれば、
「何言うていんなだ」
 なて、揺り動かさっで、はいつぁ夢だったけど。どんぴんからりん、すっからりん。
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