4 成木責め

 むかしむかし、今だらリンゴ、ブドウ、そういうふうな果樹いっぱいあっけんども、昔はここらの果樹ていうど、大体、柿にきまったもんだった。
 んで、ほの柿、木ばりおがって(みの)らね木もたまにあった。それが何故かて言うど、「正月中に成木責めていうて、ほの木をいじめて、成っか成らねか聞かねから実んねんだ」
 こういうこと言うたもんだ。して、正月の新正月過ぎっど、家の旦那、()()持ったり、(まさかり)もったりして行って、逆の方でトントンと叩いて、
「こりゃ、こりゃ、なるか」
 ほうすっど、うしろの方で、奥さんが戸のかげあたりから、「なり申す、なり申す」て。「なっこんだら勘弁してやっけんど、なんねごんだれば、ぶった伐っぞ、ええか」て、成木責めていうなしたんだけど。どんぴんからりん、すっからりん。
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