92 石炭の由来

 むかしむかし、ある村で山火事あった。ぼんぼん、ぼんぼん燃える。大きい山火事になってはぁ、ほして二日も燃えてやっと消しとめだ。ところが真中ごろ、一か所だけは(なえ)ったて消えね。どんどん、どんどん燃えてる。ほしてみんなして村中して、片っ端からつうとずつ土かけ、土かけ、消して行った。ほしたれば、ある人、
「あららら、みな石燃えているんだ」
 て言うた。黒い石みな燃える。ほしてやっと鎮火させで、ほして話題になった。
「黒い石、燃えるざぁ不思議だ」
 んで、あそこさ、いまいっぺん行ってみんべて、ほして行ってみた。ほしてほっから黒い石とってきて、家さ来て、焚いでみたれば、やっぱり燃える。ほれから〈燃える石〉ていうので、ほっからみんな取ってきて燃やすがった。それが石炭のはじまりだけど。どんぴんからりん、すっからりん。
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