65 風吹くと桶屋がもうかる

 むかしは風吹くど、タガ屋がもうかると言うたもんだど。はいつぁどういうわけだかて言うど、春先風吹くと、バン埃立って、目さ入る、目さ入っど眼病が出る。目病が出っどそのうち何人かが盲目になった。盲目になっど、そのうち男ばりでない、女もいたもんだから、瞽女さまになった。おナカマ(巫女)になった。おナカマざぁ唯歩くわけでなくて、三味線(たが)って歩く。んだど、こんど三味線がいっぱい要るもんだから、猫ぁ片っ端から殺さっだ、猫殺されっどこんどはネズミぁふえて困った。んでネズミがふえて、コガかじったり、桶かじったり、手桶かじったりすっかった。んだもんだから、桶屋がもうがった。こういうわけだけど、どんぴんからりん、すっからりん。
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