121 猿蟹合戦

 むかしむかし、天気のええ日、蟹が遊んでいたれば、ヤキメシ落っでだけど。
「ええもの落っでだこりゃ、持って行ってみんなして分けて()んなねなぁ」
 と思っていた。ほしてずうっとはいつ持って来たれば、猿こ、はいつ見てで、
「あらら、ヤキメシ(たが)ったりゃ、あいつ、なぜかして食ってみたいもんだなぁ、とってみっだいもんだな。なぜかええ工面ないべか」
 て、ほこら探したれば、柿の種一つ落っでだけ。はいつ(たが)って行って、
「おいおい、蟹くん、蟹くん、ほのヤキメシと柿の種、取換えねが」
 て言うたど。
「いやぁ、ほだな柿の種となの、(やん)だい」
「なして()んだなて、ほだな、あの、手入れして、今七、八年もおもうど、すばらしく柿()るぜ、んだど、ヤキメシなの(ひと)()いだげんど、毎(どし)()えっだな」
「はいつも、んだな。んだらええがんべ、取換えんべ」
 て言うわけで、ほこで取換えだ。で、猿ぁヤキメシ、ぱくぱく食いながら、山中さ入って行ってしまった。蟹は、こんどはええもの交換したていうわけで、家さ持って行って、家の庭さ植えて、ほして手入れした。水かけて、
  早く芽を出せ 柿の種
  出さねどハサミでハサミ切る
 て。したれば、芽むっくりむっくり出して来たって。
  早く木になれ 柿の種
  ならぬとハサミでハサミ切る
 て言うたれば、こんどむっくりむっくり大きくなって木になった。ほしてその通り、早く花咲け、早く実がなれで、とうとう実なってしまったはぁ。ところがこんど山から猿降っできて、ほして柿泥棒はじめだ。蟹は、ほに、木さ登らんねがら、熟して落ちんなばり待ってだ。ところが上さ登って行って、猿ぁみな片っ端から食ってしまう。
「いや、お猿さん、ほんではなんねべな、人の柿だまって泥棒してなんねべな」
 猿ぁごしゃえで、渋柿、蟹さぶっつけてしまった。いや蟹は柿ぶっつけらっだもんだから、甲羅さ当って、べっちょりつぶっでしまって大怪我した。死ぬか生きっかわかんねはぁて。ほして小蟹だ、「あんあん、あん」て泣いっだ。
 ほこさ、山からぶうーんと蜂がとんできて、「なして泣いっだ」「こういうわけで…」て、一部始終語ったら、
「うん、()れ野郎だ、おれぁ(かたき)とってけっから、ええ、泣くな」
 ほだえしているうち、ころころ、ころころて来たもんだから、何だと思ったれば、ほいつも山から栗が転んできたけ。ほして栗もはいつ聞いで、ごしゃえだ。
「よし、ほだらば、おれも手伝う」
 ゴロン、ゴロンと音すっど思ったれば、何だと思ったれば臼が来たけど。臼も聞いてごしゃえだ。
「よーし、おれも仇とって呉る」
 ほして、臼が屋根の上さあがった。蜂がちょうど流しの水瓶のかげさ隠っだ。栗は囲炉裏の中さ入って行った。ところが柿、たらふく食って、
「ああ、腹いっぱいなったし、あんまり柿食ったれば、つうと寒くなったから、火でもほじぐって当んべ」
 て言うわけで、猿が家の中さ入ってきて、火ほじぐっと思ったれば、栗がはじけた。「バチーン」「あちち…、水かけんなね」て、流しさ走って行ったれば、流しの水瓶のかげから長い槍で蜂ぁジュクッと刺した。
「いたたた…、こだな家にいらんない、熱いし、いたいし、何とも仕様ない」
 ていうわけで、裏から出はって行くと思ったれば、裏の口で、牛のビタ糞さ上がって、ズルリ滑って転んだ。転んだどこさ屋根の上から、ごろんごろんと臼落っできて、ぺっちょりと猿ば押さえつけてしまって、ほして皆して仇とらっだけど。どんぴんからりん、すっからりん。
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