112 桃栗三年柿八年

 むかしむかし、廃藩置県になって、いよいよもって、明治の御治世になった。御一新になった。ほして昔の役人が「羅卒」て言うて、いまの巡査みたいなになった。ほんで羅卒が田舎さ廻ってきた。ところが昔からいろいろな風紀上の問題があったもんだから、ほだごど知しゃねで、若い娘がいきなり、腰巻ふたぐって小便たった。はいつほの見っだ、草刈りして鎌砥ぎしったんだげんども、いきなり鎌砥ぎやめて、自分のかき始めた。ほうしたらば、羅卒、ほこさ来たけぁ、
「お前、公衆の面前で、尻ふたぐって小便たっだりしてなんね。もも食うたから、桃栗三年だ」
 ほうして、はいつ見っだほの若衆は砥石ぶんなげて、自分のかいっだもんだから、「かき(柿)八年」て、桃栗三年、柿八年て()っだけど。どんぴんからりん、すっからりん。
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