105 恵比須講

 むかしむかし、十一月二十日ていうど、二十日恵比須講ていうのあった。ほの恵比須講ていうのは、股大根あげて、お恵比須さま、元、餅で招ばっで、あんまり食いすぎした。ところが隣村では大根勘定して、決して、大根食せんなて言うて、いじめらっだことある。ほんどき若い女が機転きかせて、股大根の股の方、恵比須さまさ上げて、恵比須さま、腹痛くしねで事なきを得たていうわけで、股大根あげんのだけど。ほんで、
「今晩、恵比須講だな」
 て言うたれば、おっつぁんが、
「いや、今晩は恵比須講だ」
 て言うた。ほうしたれば、かか、
「恵比須講ざぁあんまいちゃえ、ドベス講っだな」
 ほうしたれば、嫁さま、
「おら方ではエベス講だのドベス講だのて()ねで、キベス講て言うでばよ」
 ほら、エビス講、本当だの、ドベス講、本当だの、キベス講、本当だのて、喧嘩はじまった。ほして、
「ほんじゃ、お寺さまさ行って聞いでみんなねっだな」
 ていうわけで、お寺さま、中さ入って、
「お寺さま、お寺さま、絵さ書いだなだから、エベス講、本当だべな」
「結構」
 ほれからこんど、かか、
「土でこしゃえたもんだも、ドベス講だべなぁ、お寺さま」て言うたらば、
「それも結構」
 嫁は、
「んで、おら方では、木でこしゃえだもんだから、キベス講て言うたもんだず」
「それも結構」
 て言うたって。「絵さ描いたものはエベス講というてもええし、木でこしゃえだものはキベス講でもええし、土でこしゃえだものはドベス講でもええ、家内中丸くなって暮すごんだれば、ほれにこれに越したことはない」
 て、お寺さまに教えらっだけど。ほれからその家では丸くなって、みんな思い思いのことしねで、ほして話合ってするようになって、大変栄えだけど。どんぴんからりん、すっからりん。
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