100 六部と牡丹餅

 むかしむかし、六部さまていうな居て、六部さま、ほっちゃ泊ったり、こっちゃ泊ったりすんなだけど。
 んで、家の息子なの、あんまり早く夜上りして、囲炉裏さなの当っていっど、
「おっ、早稲(わせ)六部泊っていだんだな、こりゃ」
 なて、(せん)には言うていだんだけど。
 ほの六部さま、ある家さ泊んべど思って、ほこの若いおかちゃんが、娘の小便ただすしたり、あるいはオシメ、次の子どもんな取換えて()だ。ほんで手も洗わねで牡丹餅搗きはだた(始めた)。牡丹餅搗いだけぁ、こんど、はいつ千切って分け方始まった。
「ほいつ食せられんのじゃ、とてもじゃない」
 ていうわけで、次の隣の家さ行った。そして泊った。したれば隣の家では、
「なんだって、おら家の家さ泊らっしゃい」
 て、上げて()だ。ほして、夕飯御馳走なんべと思ったれば、
「都合あって、牡丹餅搗かねでしまって」
 ていうわけで、ほして牡丹餅持ってきて御馳走なった。
「ほの牡丹餅、どっから用意してきたもんだ」
 ていうたれば、
「隣から持って来たんだ」て。
「ああ、やっぱり、当る罰はどこさ行っても当るて言うたもんだ。こりゃ。ほんでは結局隣さ泊っても、こっちゃ泊っても、おれ()んなねんだったな」
 ていうたけど。どんぴんからりん、すっからりん。
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