143 一生無年貢

 むかしむかし、一生無年貢ていうとこ、あるんだど。
 昔の地主さまていうど、大きいお屋敷さ倉デンとかまえて、みんなから年貢集めて、ゆうゆうと暮していた。ところがあるとき年貢米十俵つけて行った。ところがそこの奥さんが、
「こらこら、お前、何歳(なんぼ)になるんだ」「はい四十八才だ」「ほんじゃ五十才ていうもんだな」「いや、四十八才だ」「四十八才もなったら、五十才ていうもんだ」「いや、四十八才だ」
「なに、ねっちょする。四十八才もなったら、五十才だべちゃ」
「ほだか」
 て言うけぁ、十俵測っどこ米八俵はかった。したれば奥さんが、
「何だ、まだ八俵だどら」
「八俵もはかったら、十俵ていうもんだべな」
 て、奥さんが言(や)っで、二俵ただ小作人にもうけらっだていう話。平助ていう人がはいつ聞いっだんだど。
 ところでやっぱり平助が旦那さ年貢もって行くことになった。ところがそこの若旦那がぽっくり逝くなって、三十才そこそこの若奥さんが一人できりもりしていた。ところが三十後家は通さんねていうて、仲々苦しいとこがあったって、そういうこと心得たところが平助が、年貢はかりに行って、一杯御馳走になった。ほして酔払ったふりして、囲炉裡端さ横になった。ところが股引と褌の間からポロッと道陸神さま出して、高いびきで眠った。狸寝入りしった。それをチラと横目で見た若奥さま、何ともいたし方なくなって、平助ば揺り起した。
「平助、平助」「は、はい」「実はな、三番目の倉の戸開かねぐなって、何とも仕様ない。何とかお前開けてみて呉ねが」「いよいよ、ござったな」
 こう思った平助が、奥さまさノコノコ従(つ)いで行った。ほしたら、三番目の倉、お座敷倉さつれて行って、そこには準備よく、ちゃんと布団も敷いてあった。そこさ行ったら、奥さんが、
「ものは相談だげんども、米一俵まけっから、どうかおれと一緒に寝てけねが」
 始まった。
「はい」ちゃんと寝たきり何もしね。
「じれったいこと、その、平助、いま一俵まけっから」
 ほしたれば、ようやくちょっと乳首にさわったきり。二俵まけてしまったはぁ。そんでも乳のあたりさ触ったきり、動きもしね。
「なんだ平助、お前男だか、いま一俵まけんべな、どうせ」
 て言うど、ちょいっとそっから先に進むだけ、けろっとしている。奥さまもどかしくなって、二俵ずつまけて行ったど。最後には全部まけてしまって、ようやく目的達した。んだからそこは一生無年貢ていうどこだけど。どんぴんからりん、すっからりん。
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