137 屁つかみ

 むかしむかし、江戸で屁つかみという商売があった。
「屁つかみ、屁つかみ、屁つかみ」
 て触(ふ)れ声あった。
「なんの、屁なんかつかまれるもんでない。見えない奴つかんだなてあるもんでない」
「おいおい、屁つかみ屋、つかみぱぐっど、どうなるんだ」
「はいはい、つかみぱぐれば家(うち)の方も商売でございますので、つかめば百文、つかみぱぐっど二百文あなたにお上げすることになってます」
「うん、そりゃ面白い、どうだ、今わしが屁をたれてみるからつかんでみるか」
「はい、商売でございますから、つかませていただきます」
「そうか、よし、ええかやるぞ、プウッ」
 やらかした。いきなりキンタマつかんだ。
「いたたた…。これ何つかむ」
「旦那さま、親屁にがして、屁の子つかまえました。子でございますから、五十文でございます」
「何だ、屁の子とな、これはまいった」
 五十文とらっだ。それ聞いたおかみさんがカンカンになった。
「何をやってる。わたしだったら、無いからつかまんねぇべ」
 こういうわけで、
「ええか、屁つかみ屋、わたしが今たれるから、つかんでみろ」
「はいはい、商売でございますから、男女の別は問いません」
「ええが」
 そこで、おかみさんがブウとやった。そしたら股間の茂みに手をちょいと当てた。そして、「これは《へへ》でございますから、二百文ちょうだいします」
 どんぴんからりん、すっからりん。
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