118 小人と大人

 むかしむかし、ある人がずうっと行ってみたれば川があって、そこの川見っだれば島をはさんで、大陸の方と島とで一生けんめい戦争しった。よくよく見たれば小人だ。まず一寸法師なていう、こまい小人が、ほら攻める。こっちから攻める。一生けんめい戦争してだ。
「ははぁ、小人島ていうな、こだなどこだな」
 と思って、その人がつくづく、はいつ眺めっだ。んだげんども欲しくなって、その内の一人は捕(せ)めて、そして煙草入れさ入っだ。
「はぁ、珍しいもの、まずいっぱいいらねげんど、一人二人は話の種子、ええっだな」
 て言うわけで煙草入れさ入っだ。ほだいしているうちに一天にわかにかき曇り、そこさ大水出てしまった。して、流さっだ。ほうしたれば、網みたいなフワフワてあっから、v 「よし、こいつさ、手(た)ぐつかんなね」
 ていうわけで、はいつさ手ぐついたらば、すばらしい太い松の木みたいなあった。そして網さ手(た)ぐついて松の木みたいな登って来て何とか大水から逃れんべと思って登った。したれば、
「あやや、こちょびたい、こちょびたい」
 なていう、すばらしい大きな声。ほしたればほいつは大人の足さたぐついっだ人だけど。ほして、
「おお、なんだ、こだな小っちゃこい人の格好しったな流れついて来て、おれの足さ手(た)ぐついたど、こら。珍らしいこともあるもんだ」
 まだ腕白の一丁前なりかけの子どもみたいな、
「いやいや、珍しいもの捕(せ)めて来た」
 家さ持って来た。「よし、ここで」て逃げたら、
「ありゃありゃ、家の隅こまで来ったこりゃ」
 なて、家の隅こでまた押えらっだ。
「いやいや、困ったことになったもんだ、こりゃ」
 なていたれば、そこさその人よりまだ大きい人がズシリズシリと入って来たけぁ、「やぁ、おっつぁん、おっつぁん、小人捕(せ)めた」
「何、小人。どれ、うわぁ珍らしいもんだな。んだげんども野郎はいつ放してやれ」
「なして」
「なしてて、考えてみろ。この人には友だちも、あるいは親父、かかも子どももあっかも知んない。お前いねぐなったて、おれの家ではどれだけ心配する。この人の家でも、きっと心配してっかも知んないから、元んどこさ持って行って放して来い」
 こういう風に親父に言(や)っで、
「嫌んたげんどもなぁ、珍らしい。みんなさ見せっだい」
「見せんのなの差支えないげんども、決して殺したり何かえするもんでない」
 ほういう風に言うて、
「んだか、んでは返さんなねっだな」
 て、元んどこさ持って来たときには、すでに水も引いて元通りになっていだっけどはぁ。して、
「はぁ、ほだ、おれも小人を返さんなね」
 こういうわけで煙草入れ開けて見たれば、立派に割腹して死んでいだけどはぁ。それは小人たりともやっぱり武士だった。
「ああ、やっぱり小人でも武士の最後ていうのはきれいなもんだなぁ」
 て、その人が思ったけど。どんぴんからりん、すっからりん。
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