108 寄り合い触れ

 むかしとんとんあったずま。
 あるどこの村はずれさ、じんつぁとばんちゃいだんだけど。仲よく暮してた。ところがじんつぁ、ちょいちょい寄り合い触れ来る。んだど、じんつぁ一人して聞いて、
「ああ、ほうか、ほうか。酒二合か、酒二合と、はいはい重箱さうまいもの持ってが。何時に、何刻(とき)だな、分かった」
 て言うて、酒二合と重箱さうまいもの持って、ほして出かける。また次の日も、「ああ、ほうか、酒二合だな、ほして重箱だな。豆腐と鰹節(かつぶし)かけてか、はいはい冷やっこか」
 毎日、こだいこだい寄り合いあっずぁ不思議だと思って、ばんちゃ、そおっとじんつぁさ追かけて行ったんだど。ところがほいつ持って、ばんちゃ追っかけて来たのも知しゃねで、どんどん、どんどん村の方さ行ったけぁ、村に旦那さんに逝くならっだ後家かかいだんだけど。
 ほの後家かかさ、酒と重箱さうまいもの持って遊びに行ぐなだけど。ほして、アハハ、オホホて……。
 ばんちゃ、はいつ見てもどってきて、
「はいはい、今日も酒二合」
 て言うたどこ、ばんちゃごしゃえだずま。
「ほだい寄り合いあんまいな。何だ、どこそこさ行ぐなだべな」
 ばんちゃにごしゃがっでしまったんだけど。んだからあんまり酒なの持って、重箱なの持って行くどきぁ、女(おなご)衆も気付けんなねもんだど。どんぴんからりん、すっからりん。
>>鉢かつぎ姫 目次へ