7 えやづげえ

 昔あったけど。昔からの古い大家では正月が来っど、 なっても....新庄の町さ家中礼じゅもの行たもんだ。
 昔から関係(かかわり)のあた侍の家さの正月礼じゅんだ。何時ものごとで、親方の旦那爺 さまも小知恵のきぐ若勢ば連れで、あちこちさ配る こ餅..ば背負せて出がげだふうだでや。
 先ず行きづけの家さ若勢おいで、そっから他所(ほが) かげる...ごとしたど。ほしたらほごのご主人さま、徒然しったんだな。奥がら出はて来て、若勢どこ相手にいろい ろ話かげだけど。
「兄や兄、今年ぁ作まだどうだったや」て聞くじょん。若勢ごとしては、人前さ 出たら、繰々も いやづけえ.....(敬語)使え、ど教(お)へらって来たもんだし、何でもかんでも言葉使い立派にせねばて言うなで、「だいず、しょうずの作ぁ良(よ)げした」て 答えだどこだど。
「ほりゃ良(え)がったな。ほれでは米穀の方はどうだったや」てきがったじょん。大豆(まめ)、小豆(あずき)て言えばいいものを、小生意気に「だいず」「しょうず」なんてぬがすもんださげ、そごのご主人も わんざ...ど「米の出来」てば言わなえで、難しく米穀なて言 たなだろ。
 若勢ごとしては、ほのベイコクがよっくどわがんなくて、何た文字を書ぐんだ がど、首ばひねたどごだんだ。相手もそれど察して、一そうからがてみだぐなて、 「兄、ベイコク」だよ、て、 はだる...けど。
 ほしたら突嗟には「なんですな、村の人達の評判ですと、医者の嬶さまな、一 番だべじゅごどです」て、答えだどこだど。
 言葉使いじゅあ、あんまり良(え)え振りこぐもんでなえ。使いづけない言葉ば無理 に吐ぐど、とんでもなえ失敗(しくじり)やらがすもんだ。気つけねばな。
 どんぺからんこ なえけど。

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