8 山屋の贋金造り

 昔あったけど。何処(どつ)から渡て来たもんだが、山屋の長兵衛ていう家さ、悪者達 寄って来て、贋金造り始めだけど。昼間にゃ酒呑んで寝がしやて、夜ンまなっどコ ソコソど銭造ってる風だけど。
 まわりの人達も悪事してっちゅごとは薄々感づいでいだなだべども、それお上 さ告口(つげぐち)すっど、どげた仕返されっかもわがらなえんだしな。近所迷惑もええどご だったふうだちゃや。んだどもな、なんぼか領主(となさま)のお耳さも聞げでだんねべが。
 或時な、こっそり侍姿の人見えで、あっ事なえ事、何んでも聞き調べて歩ぐけ つけ。ほしてこの侍、まだ明日どうしても庄内さ越えで行がねばならなえ。大事 な物ば運ぶなで、街道ば避げて、人目つかなえよう山越えしたえさげ、間道さ詳 しい者ば案内つけて欲しいて、庄屋ば呼んで申しつけだどごだど。途中で危険な ことも起きっかしんねさげ、案内人にも気つけで警護(まも)てもらわなんなえ、少しは 腕節もきく、度胸のすわた強者三、四人も居ないだろうか、ていうなだけど。
 庄屋まだ早速ど、この話ば村の衆さ計(はか)たべ。日当もたんまり貰えるし、其(ほ) の上、庄内さ無事着いだどごろで、褒美も しこだま....はずむていうなで良え話だども、途中なんた事起ぎっか気がかりで二の足踏む者ばりだけど。そさくっと、贋金造り 達、この話ききづげで、何が考えあったどみえで、逃がすもんでなえ。
 庄内さ持(たが)て行ぐ宝物じゅあ何だにしろ、俺達どこ連れで行ぐには路銀だて充分 用意してるに異(ちが)いない。さいわい街道ば通らなえで間道越すなだていう。若し途 中でこの荷主をばらすとすれば願ったりだて言うなで、他人は交(かぜ)ないで贋金造達 ばりで行ぐよう申出たと。たいして荷物どてないども、何がど役立つべど、丈夫 な荷杖だけは用意して従(つい)て行ったけど。
 さあ、これから人里を離れて山道さかかるていう時、侍まだ言うにゃ、「お前達 は案内人だから先に立て歩げ」ちゅもんで、皆ば自分(わあ)より前方立てて歩がせて、 後から幾(なんぼ)か間を置いで従で来るていう按配だべ。それさ一服しんべとなっと、 今度(こんだ)は皆より一段と高台(たかみ)さ上って休みとるし、わずかの隙も見せなえじょん。折あらば力合せで荷杖で叩きのめしてくれんべと図って来たなだども、とうど、そ の機会もなぐして、庄内さ着いでしまたけど。
 ほして侍の言うにゃ、
「お前達(だ)ご苦労だった。大役を果してくったんだから、上役さまがら、ご褒美が たんと出る。勿論日当もはずんでもらう。この書状持って一足先きにご門をくぐ れ、俺はもう一所(ひとどこ)用足して直ぐ行くから」と。矢立を出して一筆したためてくっ たけど。
 悪者達ごとしては、大した働きはしないども、これでご褒美がもらえれば、大 きい当は外たにしても、まあまあと思たろ。ほして侍から教へらった通り、その 書状たがてお役所の門ばくぐたべちゃ。
 でもなえちゅごんだが、それっきり後は門の外さ姿見えながったど。ほれとい うな、侍は領主さまがらの言付けで山屋まで調べに行たなだったふうだちゃ。ほ して、とっくに悪者達の企みば見抜いではな。書状さもとっくりと認めであっさ げて、多分、贋金造達はそのまま牢屋さ入れらったべぢゅごんだ。
 どんぺからんこ なえけど。
 悪い奴等ださげ縛てくろて書いであんなも気つかなえ。字読めなえじゅは情な えもんだ。お前達、学校さ行て、んと字覚べなんねな。

>>安楽城の伝承(二) 目次へ