12 橋の下にいる神さま

 昔あったけど。橋の下には、「賽の神」ていう神さまいなさてな、集落中(むらなか)さ疫病神など一歩も入らなえよう、いつも護(まぶ)ていて下さんなだ。
 お前達、いたずらこえで、橋の上がら小便なのたんなえべな。ひょっとして、ほの神さまのお顔さ、しぶきでもひっかがっど大変(おんごど)だぞ。罰(ばちや)かぶて、しんちこ曲んださけな。この神さまは、ホラ、疫病(やんめ)追いや眼わずらいの取払いすっ時、橋のたもどさ藁人形祀てくんべ。あん時の神さまで、道祖神さまていう所もあるじゅごんだ。
 どごのむがさりでも、ここを通る時にゃ、わざわざ足とめで「たんぎ唄」あげて行ぐのがきまりどされる。
    小石小川原のザクザク石は 涛に揺れて流れ行く 流れ行く―。
 てな。むがさりは他所者(よそもん)のお通りださげ、仁義だどごだろ。この祝い唄で通さしてもらい、またこの集落(むら)も益々繁昌するようにと、祝わて行ぐどごだんだ。ほのぐらえだもの、なして小便なのたってええもんだがよ。何だて…。
    一人二人三平の子、なえどりきんじの糞かき棒、橋の下のめぐされ爺―
 だて。とんでもねぇ、口ぁひん曲んだぞ。罰かぶて橋がら落ぢて、怪我(あやまぢ)もしかねなえ、ほれより、お前達こげた唄うだわなえがな…。
    ゆんべおっちょめこ きっくりやのおおふりこ
    年もえがずに長吉にもらわれて
    長吉もた子は男の子ども
    江戸にのぼらせて 学問させて
    江戸で一番 新潟で二番 酒田三番 吉原で四番
    小石小川原のザクザク石は
    涛に揺れて岸に着く 岸に着く
 昔、よぐしょんなごつぎして遊だもんだったよ。
 どんぺからんこ なえけど。

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