2 吹雪の中の田植

 しょっでん(昔)にゃ、百姓してる家では小正月十五日に、雪原(ほでやら)ば田圃(ともで)にみたて田植(さつぎ)のまねこして上作祈たもんだ。
 あぎの方(恵方)ちゃ地所ば決めでな、先ず四隅さ削片(けづりかけ)さしこむ。注連張たと同じこと。その内側さ稲藁ば苗になぞて植えっとこするでや。
 まず?(たら)の木ば五本さす。木も米俵もタラで、俵はみのりのしるしでめでたい。そして木という字を五つ並べたら何になる。三つに二つ組まへっど、森と林になんべ、森林だ。
 次、まだ葭(よし)さして、これは芦原だ。森林で地底さ溜た水、まだ芦原さ泉気(すずけ)たって湧き出してくる。ほしたらその水利用(つか)て田を耕すていう段取りで、いよいよ稲藁を十二所(どこ)さす。終えだら大豆殻(まめがら)も植える。これは陸作だ。ほごで、煤掃きさ使た藁梵天ばそばさ立て、ほしてお灯明あげ、お神酒注(つ)いで豊作祈るもんだ。
 この雪中田植さ手かけるなは、そこの家の鍬頭なる人で、ほれさこなえぶち(早苗配り)どて、男童どこも手伝(てつで)させる。こうして明げで一番鳴ぐが鳴かなえがに、童達、まだ鳥追いに廻て来るでや。家毎に鳥追い唄うたて、餅なのもらて行たもんだ。
 もしか高窓(さま)さ駄賃上がてながったりすっと、お玉投げじょんで、雪玉にぎって家ン中さ放り投げでよこす。 嬶ぁ羽交(はがい)かぶて、起ぎで鳥追(ぼ)えなえ、追えなえ―どて、徒坊達(きかなしだ)悪態つく者(な)もいだもんだけ。
 十六日にゃ若衆達も家毎(やごめ)田植踊り舞ってご祝儀もらて、宿で祭りするし、遠く他所(よそ)村からも田植踊りの門付けも来たもんだ。とにかく、正月にゃ百姓の祝事たんとあって、童達も若達もそれぞれ役割ついで楽しがったろよ。
 雪中田植て言えば、田植吹雪(さつきふぶき)どて、この日にはなっても(きっと)吹雪つぐどしたもんだどもな。がってしなえ…。
 どんぺからんこ なえけど。

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