18 裕福と貧乏の見分け

 昔あったけど。或時(あっづき)な、童達(わらしだ)さ一枚ずつ紙あずげで、こさ裕福な家ど貧乏家(しかだなええ)ど二軒並べで描いでみろて、題出したけど。お前達だど、何たな絵ば描ぐがな。
 何や、大きい家どめちゃこい(小さい)家どが。ほうしたらばなんぼ大きたてボロ家だてあんべした。家ぁめちゃこえたて、財産たんと持ってる家だてあんべよ。他にも馬この居だ家ど居なえ家どが。門構えのりっぱな家ど、屋根のぶじょごっだ(こわれた)家どが並べて描いだなや、いろいろ出てきたけど。
 中で誰れ見でも上手に描げたてうなづげんなは、ほれぁまだ屋根さ南瓜のツル這(は)わせで、実ばならへった家ど、隣まだ燕(つばぐろ)ぁ軒さ巣営(く)ってっどこ描いだなだけど。何でもこれが一等だて誉めらったふうだ。南瓜ぁ貧乏で、燕ぁ金持じゅわけだな。
 第一、貧乏人(しかだなえひと)は他所よげえ持てなえばりか、南瓜の柵かげる長木や柴もなえさげて、屋根さ直(じか)に這わせる。草屋根(くづやね)傷むごと判りきってんなだども、どうせこうせださけて言うなで、構わなえでおぐどごだべ。屋根這(は)たなりもの食うど、中風になっからて食うもんでなえ、昔からそう戒めだもんだども、貧乏人にゃ背に腹かえらんなえどごだべちゃ。
 片一方(かだっぽ)、燕まだ裕福な家ば選んで巣営むどごだど。毎年同じ巣ば修理(どや)して営(く)むさげ、ボロ家や股木小屋(まったごや)でや、もともと頼りなくて駄目ど見るわけだ。ちゃんと先ば読んでかがっとこだんだ。
 ほれさ、燕巣営んだ家は火事にあわなえても言うしな。ありがたえ鳥こだもんだ。まだ燕が早ぐ渡て来る年は豊作だじゅごんで、初渡来ば、高窓(さま)さ御神米(おてかけ)供(あ)げて迎えるもんだ。やっぱし燕が巣営んだ家は裕福だじゅごどなんべちゃな。
 お前達、燕見がげで追たり、石でからんだりしちゃ駄目だぞ。大事しなえど裕福にはなれなえな。
 どんぺからんこ なえけど。

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