15 地蔵浄土

 むかしあったけど。
 あるところに、おじいさんとおばあさんがあったど。
 おじいさんが庭にお掃除に行ったときに、どこからともなく団子ころんできた ど。そうすっど、
   団子どの 団子どの
   どこまでござる
 て、おじいさん、追いかけて行ったわけよ。ほうすっど、
   御山の堂まで 御山の堂まで
 て行 (い) ぐわけだ。ほして、しばらく行って、また、
   団子どの 団子どの
   どこまでござる
 ていうど、やっぱり、
   御山の堂まで 御山の堂まで
 ていうのだど。ほしてしばらく行くど、今度、小さな穴があって、その孔から 団子が転がって行った。そうすっど、おじいさんもそいつさ従いて行ったど。行っ てみたば、お地蔵さんがあった。ほしてお地蔵さんの前に行ったれば、団子なく なってだもんだから、お地蔵さんに、
「団子が転がって来ながったが」
 てお聞きしたら、
「いや、転がって来たげんども、ごちそうになったがら、そのお礼として、今晩 ええことあっから、まず、手に上がれ」
「もったいないから、上がられない」
「ええから、ええがら」
 ていうわけで、手に上がった。次に、
「肩さ上がれ」
 そうすっど、肩も上げていただいて、今度、頭さ上がれていうわけ。
「もったいない、とにかく頭さなの、どんなことあっても、上がられない」
 ていうたげんど、とうとう頭さ上がって、そうして、
「二階の上に、上がって待ってなさい」
 と言わっで、
「そうすっど、今晩、鬼どもが集 (あつ) ばって、博打 (ばくち) すっから、見てろ」
 ていう。そうすっど、こんど、
「ええ加減したらば鶏の鳴き真似しろ、コケコッコーといいなさい」
 そうすっど、鬼共は、
「一番鶏鳴いた」
 少し経ったら、また「鶏の真似しなさい」ていうもんで、それでまた鶏の真似 して、そして三回目やったれば、今度は鬼共は、
「夜明けっから大変だ。んだから、また明日にすんべ」
 というわけで、散らばったお金、そのままで帰って行った。そうすっどお地蔵 さまが、
「そのお金を全部持って行きなさい」
 そんで頂いてきたわけ。ほうして今度ぁ、家さ帰ってきてお金ひろげていると、 お隣のおじいさん、おばあさんが来て、そこを見て、
「どうしてこんなにお金もうがった」
 そうすっど、そのことをみな聞かせたわけだ。と、
「ほんじゃ、家でもそういう風に、じさまをやらんなねぇ」
 ほして、団子拵って、ほして、その団子を押っつけ行ったら、やっぱり穴があっ たって。ほして、そっから団子を転ばしてやって、お地蔵さん立ってやったもん だから、
「食べろ」ても、
「食べだくない」
 ていうな、無理無理口さ突っ込んで、手にのり、肩に上がり、頭に上がって、 ほしてやっぱり待ってだって。ほうすっど、こんど、やっぱり言われた通りに、 鶏の真似三回やって、そのうちに、鬼の方で、
「人くさい、人くさい」
 て、始まったてよ。そしてとうとう人くさい、人くさいではぁ、そのおじいさ んが見つけられたわけよ。そうすっじど、
「ゆうべのお金も、このおじいさんが持って行ったんだから」
 て、さんざんにいじめられて、泣き泣き帰ってきたど。
 ほうすっど、おばぁさんが、血だら真赤になって、おじいさんが帰って来たも んだから、
「ずいぶん、ええ着物もらって、ほして喜んで歌うたって来た」
 というて、おばぁさん眺めて待っていたら、家に帰ってきたら、そうでながっ たど。
 んだから、人の真似ざぁするもんでないど。どーびん。
(佐沢・武田はる)
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