23 おかめ・ひょっとごの由来

 むがすむがす、あるところに、(しも)ぶくれのぽちゃっとした娘がいで、これはまた働くごどったら、まず他の娘とちがって、一生懸命、身を粉にして働く娘いだったど。
「いや、ええ娘だ」
 ところが、ほれ、下ぶくれで、あんまり器量にめぐまんねもんだったがら、縁が遠がった。
 ところがある時、朝げ、水汲みに行ったら、釣瓶の中さ小判が一枚入っておった。次の日もまた小判が入っていだ。
「うえっ、不思議なこともあるもんだ」
 ど思っているうちに、水汲むべと思ったら、釣瓶の方重だくなってはぁ、ほして、逆に上げらっでしまって、ポチャンと井戸の中さ入って行った。井戸中さ入ってみて、たまげた。世の中の裏側なんだけど。ほこが。
 ほして、迎えに来たのは、恵比須さま、大黒さま。ずうっとその人と行ってみだれば、一家が七福神なんだけど。恵比寿、大黒、ほてい、福禄、毘沙門天、寿老人、弁財天と、全部七福神さまいだっけて。ほして、
「実は、いま非常にいそがしい時だから、手伝ってけろ」
 ていうわけで、請われるまま、ほの娘が一生懸命手伝った。ほしてある時、
「いや、この井戸の中ていうものは、世の中の裏街道なんだ。裏なんだ。ほご見っど、よっく世の中わがっから、お前がこれから地上さ帰って行って、表さ帰って行って、もしわからねごどあったら、ちょいちょいこの井戸の中さ入ってみろ。んだど、世の中の裏側みな見えっから」
 こういうわけだ。ほして、井戸の中さ入って行ってみるごとを聞いで、井戸から何がしのお礼をもらって帰ってきた。ほうしたら、地上では、
「ほら、娘、居ね。なぜしたべ。おかめ居ね。おかめ居ね」
 て、探したど。ほしたら井戸の中から出はってきた。
「ああ、ええがった、ええがった」
 て、ほして、井戸の中から、すばらしく御褒美もらて来たもんだから、何だか娘さ福がついてるらしくいで、いうわけで、あるすばらしく大きいどこから、声が掛った。ほしてほこさ頼まっで行った。したら、やっぱり裏側の、先の先まで見えるもんだから、ほこでも、たちまち、もでで、すばらしく、ほごの家も福しぐなった。
 ほしたら、はいづ殿さまの耳に入って、殿さまも、
「ほんじゃ、おら方さ貸してけろ」
 ていうわけで、ほこでは、ある程度福しくなったから貸してやった。ほうしたら、その殿さまも、すばらしく、米相場だ何だていうので当った。やっぱり、ほれ、殿さまたりといえども、一銭だて金ていうな無くて、祿高でいう米で貰うもんだから、売らなければ一文にもならなかったど。売るためには札差ていうな居で、売って采配ふって、ほして数多(あまた)武将さ、まず金を呉れたりするのは、まず米を売らなければならながったど。ほの売り買いなんかは、裏の裏まで分かるもんだから、先の先まで分かるもんだから、大変貴重だったて。
 ほして、そこに長年仕えっだ若衆と一緒になるわけだね。ほの若衆ていうなは、いわゆる若いどきから、風呂焚いだり、御飯炊いだり、何かえしていて、口が少し曲っていだていうんだな。んだげんども、ほれ、二人は一緒になって、楽々暮したど。んで、片脇がおかめであり、片脇が火男だったていうわけで、おかめとひょっとこが一緒になったていうわけで、おかめ・ひょっとこの話。どんぴんからりん、すっからりん。
>>竜宮童子 目次へ